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NTT再々編の進展は期待薄~「総務省」のIT人事

  郵政・自治・総務の3省庁を統合して巨大官庁「総務省」が6日発足する。初代の総務事務次官には自治省の嶋津昭財政局長(1967年入省)の就任が決まったが、IT関係ポストでは、郵政省の天野定功電気通信局長(同)が次官級の総務審議官に昇格、NTT(9432)の再々編を担当する総合通信基盤局(電気通信局を改組)の局長には郵政省の金沢薫放送行政局長(同)が就く。

  しかし、天野氏は事実上の棚上げといえ、通信行政の経験が少ない金沢氏も手腕は未知数。NTT再々編は結局、郵政省の有力官房長で、総務省官房長に横滑りする團宏明氏(70年)が、総合通信基盤局長になる2~3年後まで何も進展しないという見方すら出ている。

  ●数合わせのポスト
  「総務審議官?いったい何をするんだ」―。郵政省のある有力課長は、天野氏の昇格を冷ややかな口調で語った。総務省には、事務次官のほか次官級のポストとして3人の総務審議官を置くことが決まっていた。1人は国際担当の総務審議官で、3省庁の中では唯一国際交渉経験がある郵政省の浜田弘二郵政審議官(69年)が回るが、残る2人は、いわば“数合わせ”のポスト。事務次官が自治省から出るのを受け、総務行政全般をみる準次官として総務庁の中川良一人事局長(68年)、同じく郵政行政全般は天野氏をそれぞれ充て、バランスをとったに過ぎない。

  「次官級ポストといっても、事務次官会議に出られるわけではなく、特命権限があるわけでもない。われわれが報告に行かなければ、浮いた存在になる」(有力課長)といわれ、まさに天野氏は棚上げされた形だ。昨年夏のNTT接続料引き下げをめぐる日米交渉の際、天野電気通信局長は、NTTを擁護する自民党・郵政族と外圧の間に入って立ち往生、国内外から「郵政省には当事者能力がない」と批判を浴びた。

  ●リーダー不在
  その後、NTTグループの完全資本分離を視野に入れた電気通信審議会(郵政相の諮問機関)答申をまとめたものの、総務省発足と同時に退官を求める声もあったほど。「総務審議官も6月の定期異動までではないか」という囁きも聞こえる。

  NTT再々編は、総合通信基盤局長に就く金沢氏が引き継ぐが、同氏は郵政3事業や放送行政の経歴が長く、NTTや新電電と角突き合う規制行政の経験はない。金沢氏を支えるスタッフは、有富寛一郎電気通信事業部長(72年)をはじめ、貝沼孝二事業政策課長(77年)、田中栄一料金サービス課長(78年)、宮崎順一郎データ通信課長(79年)が軒並み留任するものの、郵政省内では「誰一人リーダーシップをとる者がいない」と酷評されている。

  天野氏がまとめた電通審答申は結局、通信市場の競争促進に向けたボールをNTTに投げただけで終わった。東西NTTの業務領域拡大や放送事業への進出など、NTTが望むとみられる規制緩和を条件に、東西NTTの地域通信網の一層の開放、NTTコミュニケーションズやNTTドコモ(9437)に対する持株会社の出資比率引き下げなど、競争促進策を引き出そうというのが骨子。

  ●ボール受けないNTT
  経過期間の2年を経ても競争が進まない場合は、NTTグループの完全資本分離を検討するとしているが、「NTTはボールを受け取ろうともしていない。徒らに2年が経過するのは眼に見えている」(新電電幹部)という見方が大勢だ。

  しかも、郵政省内で“アンチ天野”の急先鋒である團官房長は、NTT再々編に批判的。團氏は、1997年のNTT経営形態議論の際の電気通信事業部長であり、分離分割(完全資本分離)を唱えた前回の電通審答申を修正し、現行の持株会社方式によるグループ経営で政治決着を図った張本人。「1999年7月のNTT再編後わずか1年で、それをご破算にする天野局長を腹に据えかねている」(有力課長)といわれ、周辺には「(天野氏の)思い通りにはさせない」と洩らしているという。

  その團氏が、総務省の人事権を握る官房長に横滑りする以上、総合通信基盤局の幹部がいずれ更迭されるのは必至。新電電や外資系通信事業者は密かにそれを期待しているものの、一方で「競争促進の経過期間が切れる2~3年後は、ちょうど團さんが事務次官候補として総合通信基盤局長に就く頃。そうなれば、NTT再々編はまた遠のく」と不安の声も挙がっており、複雑な心境で総務省のIT関係人事を見ている。

■URL
・NTT完全資本分離、カギ握る橋本行革相~参院選と外圧が焦点に
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2000/12/12/doc1360.htm
・“解体”の危機感から高まる電通局批判~郵政省
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2000/10/10/doc642.htm

(三上純)
2001/01/04 12:06