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株式市場に新風~外資系IT企業の日本法人

  日本オラクル(4716)の大成功を背景に、コンピューター関連の外資系日本法人の上場に注目が集まっている。コンピューターウイルス対策のシマンテックが「株式公開を視野に入れた戦略を検討している」としているほか、世界最大のソフトウェア企業である米マイクロソフトの日本法人に対しても「上場するのでは」といった噂が絶えない。ほんの数年前まで日本法人は「海外本社の単なる出先」的な役割しか持っていなかったが、オラクルの成功によって風向きはすっかり変わりつつある。次に成功するのはどこか。日本の株式市場を変える可能性すら秘めている外資系IT企業の上場だけに、低迷するマーケットのカンフル剤としても期待が高まっている。

  ●大成功の日本オラクル
「日本オラクルの企業案内」から
  日本オラクルは米オラクルコーポレーションの日本法人として1985年に設立した。日本IBMからスピンアウトした佐野力氏が「コンピューターがいっそう進化すれば、必ずデータベースの重要度が高まる」との見解から、佐野氏の仲間わずか4人で興したのがオラクルだった。しかしその後も大きな飛躍の機会はなかったが、コンピューターインフラの先進である米国では徐々に業績を伸ばしつつあった。

  このあと一気に業績を拡大、オラクルは日本でも成功した。データベースを単なる“記録集積ソフト”ではなく、リレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)というジャンルに育成し、企業の経営に関わる決定や戦略に不可欠な存在としてのソフトウェアを開発、提案して現在に至っている。日本オラクルも設立から12年後の1997年には売上高が200億円を突破。このときすでに世界的にはマイクロソフトの対抗馬最右翼の座にオラクルは据えられていた。

「日本オラクルの企業案内」から

  1998年5月決算で売上高466億円、経常利益109億円、純利益56億円に上っていた日本オラクルは、1999年2月に店頭登録企業として株式を公開。さらに翌1999年決算で売上高650億円、経常利益155億円、当期利益79億円を実現し、2000年4月には東京証券取引所1部に上場を果たした。これ以後、日本オラクルは爆発的な人気銘柄として高値を続け、2000年終盤になって株価も落ち着いたものの、典型的な“IT関連投資株”の代表的存在としてマーケットでも認知された。

  ●シマンテックも?
成田シマンテック社長
  2000年8月に上場した、セキュリティーのトレンドマイクロ(4704)もIT化の大きな波に乗った企業のひとつだ。インターネットが趣味や個人の利用から大きくシフトし、企業やエンタープライズ規模の対応まで含めた応用が可能になったとき、需要が高まったのはインフラとも言える企業ネットワークをコンピューターウイルスから守るソリューションだ。こちらも欧米での業績続伸を背景に好調を維持している。

  同様に、古くはコンシューマーレベルのパソコンのウイルスセキュリティー対策ソフトなどで知られるシマンテックは、今後数年先に株式公開を実現しそうな企業の有力候補といえる。同社の成田明彦社長は「現時点では米本社と(株公開の話を)検討し始めたばかりで具体的なスケジュールは決まっていない」としながらも、「他の海外法人との整合性を調整している。上場という意味では日本法人が世界の中でのモデルケース的な存在になれれば」と意欲を示す。「何が何でもいち早く上場するといった考えはない」とも指摘するが、これは「公開の目的が資金調達ではなく、いま以上の社会的な認知度や知名度アップを図る」ことにあるため、という。

安田ロータス社長
  米IBMの傘下となった米ロータスディベロップメントの日本法人ロータスの場合はもう少し事情は複雑だ。同社にとって親会社が2社存在するため「簡単な割り切りでは上場などできない」(安田誠社長)が本音だ。

  ●変わる日本法人の位置付け
  しかし、上場という手法に対しては決して否定的ではない。「日本法人が欧米本社の日本支社的な認識はもうなくなってきている」と言う通り、機会さえあれば「上場や公開も考えていくべきもの」と安田社長は話している。

  パソコン周辺機器の製造で知られる米ロジテックの日本法人ロジクールでも見方は同じだ。滝沢治雄社長は「上場は常に今後の展開の中で視野に入れているもの」とする一方、「ただし、上場しかないといった判断はない。上場が多くの選択肢のうちのひとつ」とも話す。

  いずれにしても、日本でのIT化が進み、日本法人の規模が大きくなるほど欧米に本社を置く親会社と同様の動きが出てくる。日本オラクルは極端な成功例ともいえるが、それでも今後、成功例も失敗例も出揃ったとき、日本における外資系IT関連企業の新しい価値や見方が決まってくるともいえる。噂されるマイクロソフトの上場が仮に実現すれば、オラクル以上の成功ケースとなる可能性もある。

  日本の株式マーケットは伝統的な重厚長大企業に引っ張られてきた一面を持つ。しかし、米ナスダック市場との株価の連動性が高まるなどIT関連企業により、様相が変わってきた。日本オラクルなど外資系IT関連企業の上場は、市場のそうした変化を加速させることになろう。

■URL
・日本オラクル
http://www.oracle.co.jp/
・トレンドマイクロ
http://www.trendmicro.co.jp/

(市川徹)
2000/12/28 10:28