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電柱・管路の開放、事実上の義務付けへ~孤立した通産省

  NTT(9432)や電力会社が保有する電柱・管路の開放が、「利用ガイドライン」により、“事実上”義務付けられる見通しとなった。政府は、インターネットの普及には、多くの通信事業者が伝送路である電柱・管路を利用できることが不可欠と判断、国による(1)利用ガイドラインの策定(2)紛争処理手続きの法制化―の方針を固めた。NTTや電力会社が主張していた“私契約に基づく開放”を退け、限りなく義務化に近い内容となった。しかし、政府内部には文字通りの法的義務付けを求める強硬論もあり、なお曲折もありそうだ。

  ●電力に配慮する通産省
  「今度ばかりは、通産省も孤立無援だった」。電気通信の競争政策をめぐって、このところ、通産省に発破を掛けられっ放しの郵政省の幹部は、愉快そうに語り始めた。内閣官房の内政審議室を中心とする、郵政、通産、建設など関係省庁の連絡会議で、通産省は終始、電力会社の電柱・管路の開放に消極的だった。「無制限に開放してしまえば、本業の電気事業に支障を来しかねない。自主開放に任せるべきで、もし、賃貸借をめぐって紛争が起きれば、独占禁止法で処理すればいい」という判断。実際、東京電力は義務付け阻止に向け、光ファイバー網の全面開放(自主開放)を打ち出していた。

  「通産省の主張は東電の意向を受けたもの。省内は一枚岩ではなく、資源エネルギー庁は盛んに反対していたが、IT行政を担当する機械情報産業局は沈黙していた」(郵政省幹部)と解説される。結局、落とし所は義務付けではなく、“事実上の”義務付けに固まった。

  電柱・管路の賃貸借交渉は今後、政府が策定する利用ガイドラインに沿って行う。NTTや電力会社は、開放を原則とし、コストベースの対価、貸与可能な電柱・管路の情報、申し込みから貸与決定までの手続き・標準期間を開示しなければならない。また借り手の新電電や外資系通信事業者と紛争が起きた場合は、電気通信事業法73条に基づき、郵政相が裁定する。

  ●電通法73条の改正も
  73条による大臣裁定は、かつて一度も発動されたことはないが、従来も民有地の電柱・管路について定められた紛争処理スキームだった。しかし、公道や国道の電柱・管路に通信回線を張る場合は、道路管理者である都道府県、または建設省の道路占用許可が別途必要になる。次期通常国会では、73条を公道や国道にも適用できるように改正する見通しだ。

  新電電の幹部は「通信需要の旺盛なオフィス街や繁華街は、公道や国道沿いにあり、その電柱・管路が開放される意義は大きい」と評価し、郵政省の幹部も「憲法上の財産権の問題を考えると、義務付けは難しいが、ほぼ義務付けに等しい措置」と自画自賛する。 しかし、IT戦略会議では、堺屋太一経済企画庁長官や孫正義ソフトバンク社長が、米通信法と同じく法的義務付けを主張している。NTTに対する加入者系光ファイバー網の開放義務化も、電気通信審議会(郵政相の諮問機関)の議論は平行線が続いており、線路敷設をめぐる攻防は長引きそうだ。

■URL
・波紋呼ぶ東電の光ファイバー網全面開放
http://www.watch.impress.co.jp/finance/wadai/articles/001016-1.htm

(三上純)
2000/11/06 10:28
3/30(金)
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