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自主規制機能が弱体化~東証労組、「株式会社化」で質問状

  株式会社化の準備を進める東京証券取引所(土田正顕理事長)に対し、東京証券取引所労働組合(井上道広委員長)が質問状を提出していたことが明らかになった。この中で労組は、株式会社への組織変更について「独立性が一層後退し、大蔵省・証券会社による取引所の支配構造が強化される」と疑念を投げ掛けている。

  土田理事長宛ての質問状によると、会員制組織の利点について「赤字を出さないで収支を均衡させればよいこと」と強調。株式会社化については「経営目標の第一が利益追求になり、取引所の公共性が大きく後退」、「効率第一主義が自主規制機能を弱める」などと厳しく批判している

  また、大阪証券取引所とソフトバンクの連合によるナスダック・ジャパンの開設など市場間競争の激化に伴い、「上場審査や上場後のディスクロージャーに対する要求が甘くなった」と指摘。具体的には、光通信の株価暴落に対しする東証の監視体勢を挙げる。さらに、マザーズ上場銘柄と暴力団との関係が取り沙汰される疑惑にも、「東証は臭いものには蓋(ふた)をする姿勢」と断じている。

  労組の最大の関心事である労働条件については、「固定的な支出の人件費は東証が最も削減したい項目」と分析した上で、「賃金・一時金の引き下げや雇用不安の発生」に強い懸念を示した。また、取引所の各部門が分社化される可能性を指摘し、「労組の影響力を一定部門に封じ込める手段となる」と危惧する。

  一方、東証の財務体質については「(株式市況の好不調に応じて)収入の波が大きい証券界で、取引所が安定的な利益を確保することは容易ではない」と、その脆弱性を認めている。が、どうしたら安定収入が確保できるのかなど、具体案を示すには至っていない。

  ●複雑に絡み合う“私益”

  労組の質問状には、うなずける部分もあるが、依然「親方日の丸」的な体質が随所に滲み出ている。

  株式会社化を推進する理由について、東証幹部は「意思決定の迅速化や資金調達の多様化などは表向きの話。役職員の意識改革が最大の目的だ」と漏らす。

  東証の株式会社化問題には、最高ランクの天下り先を堅持したい大蔵省の思惑や、「一人一票」の会員組織から資本の論理で市場を牛耳ろうという巨大企業の野心、それに労組の既得権確保などが複雑に絡み合う。

  しかし、取引所は一種の「公共財」である。国民不在のまま、なし崩し的に議論が進むことは許されないはずだ。


(兜太郎)
2000/10/31 12:14
3/30(金)
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