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光加入者網開放で攻防始まる~NTTと郵政省

  NTT(9432)の光ファイバー加入者回線の開放問題が、通信競争政策の大きな焦点に浮上してきた。NTTは開放は表明したものの、光加入者回線の賃貸借はあくまで事業者間の交渉で行うと主張、開放義務を課したい郵政省と対立している。しかも、NTTは光加入者回線を用いた高速インターネット接続サービスを12月から開始すると発表、これには新電電が「NTTにしかできないサービスであり、公正競争に逆行する」と反発姿勢を強めている。NTTの新サービスを認める郵政省への不信感も手伝い、事態は混迷するばかりだ。

  ●1夜で書き直し
  「東日本の井上さんが書き直させたらしい」。NTT関係者はこう解説する。電気通信事業の競争政策について、郵政省が募ったパブリックコメント(意見募集)の提出期限を翌日に控えた9月18日。NTTグループは宮津純一郎(持株会社)、井上秀一(NTT東日本)、浅田和男(NTT西日本)の3社長が集まり、最後の意見調整を行った。当初、意見書原案には「加入者系光インフラの開放」が謳われていたという。そこにはグループ再々編を有利に進めるためにも、一定の譲歩をすべきという配慮があったが、これに強硬に異を唱えて押し切り、一晩で書き直させたのが東日本の井上社長だったといわれる。

  実際、NTTの意見書は「光インフラはメタル(銅線)と異なり、当初から競争下で構築されており、電話のようなユニバーサルサービス規制ではなく、自由競争に基づくルールの整備が必要」と訴えている。つまり、光加入者回線は貸し出すものの、料金を含めて“相対取引”であり、場合によっては賃貸を拒否することもあり得るということだ。

  ●日本交信網との合意が盾に?
  需要家宅に引き込む加入者回線は“ラスト・ワン・マイル”と呼ばれ、最も光ファイバー化が遅れている通信網。しかし、その光回線を使えば、動画像を家庭まで送るインターネット放送など様々なブロードバンド事業が可能となる。実際、NTTの新サービスは毎秒10メガビットの高速インターネット接続を月額1万円程度で提供しようというものだ。

  光加入者回線の開放を義務付けられてしまえば、賃貸拒否ができないのはもちろん、料金も約款化して郵政省の認可を受けなければならない。NTTにとっては何としても規制を避けたい分野だ。ある新電電の幹部は「井上社長は“相対取引”の既成事実化に動き出している」と指摘する。というのも、光回線接続サービスのベンチャー企業、日本交信網(千葉県柏市)とNTT東日本のトラブルが収束に向かっているからだ。光加入者線の賃借を要求する日本交信網に対し、NTT東日本は当初、拒否の姿勢だったが、日本交信網が電気通信事業法38条に基づき、郵政省に大臣裁定を求めたあたりから軟化しつつある。事業者間で合意してしまえば、郵政省も介入はできない。

  「日本交信網との合意事実を楯に、義務化をやり過ごすのがNTT東日本のハラ」と、新電電の幹部は警戒する。果たして郵政省はNTTにどう対抗するのか・・・。

■URL
・NTT(持株会社)
http://www.ntt.co.jp/
・郵政省
http://www.mpt.go.jp/

(三上純)
2000/10/02 11:36
3/30(金)
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