調整相場が長引き市場の意気は上がらない。しかしそんな沈滞をよそに、元気いっぱいなのがネット取引で信用の売り買いを仕掛けている個人投資家の一群、デイトレーダーだ。松井証券などのネット証券10社が信用取引を導入して生まれた“サンクチュアリ(聖域)”、“経済特区”に盤踞(ばんきょ)し、切り取り自由の勝手放題に振る舞っているのである。
景気や業績のファンダメンタルズ悪化や、持ち合い解消売りの需給悪もまったく意に介せず、「値動きのあるところチャンスあり」と徒党を組まず、あくまで個人プレーに徹する投資テクニックは、21世紀型の投資スタイルに有力なサジェッションを与えるかもしれないのである。
●機敏な反対売買
ネットの信用取引で独自な動きをする銘柄は、すでに昨秋以降の波乱相場で目立った存在になっていた。日揮(1963)とジャパンエナジー(5014)がその代表だ。ネット証券経由の手口の関与率が高かった銘柄である。前者は年初安値242円が年末に885円と3.7倍高、後者も同じく85円が280円へ3倍高となった。全般相場は、日経平均株価が年間で27%の下落となったから逆行高、異彩高で年間上昇率ランキングの上位に顔を出している。
しかし、両銘柄は最初から大化けを狙って仕掛けられたわけではない。上値が重くなれば売り、下値に下げ止まりの兆しが出れば買いと場味に応じた柔軟、機敏な反対売買に終始していた。
値幅も10円、20円程度の値幅稼ぎである。格安手数料だから、それでも十分なオツリがくる。両銘柄の例から明らかなように当然、仕掛ける銘柄は次から次へと目まぐるしく入れ替わる。こうした事情は高水準な株不足銘柄数、逆日歩銘柄数に表れており、東証ベースで現在も前者は約300銘柄、後者は約200銘柄に達している。
●東洋エンジの急騰も・・・
もちろん、仕掛ける銘柄は“ボロ株”中心だ。業績も業界環境も逆風下にあり、外国人投資家やファンド筋も見向きもしない銘柄である。だからこそ上下への値動きは激しくなり、全般相場に左右されない独自性を発揮できる。またネット環境下だから、誰もが個人ベースで情報発信が可能だ。このため”風説の流布”まがいのガセネタが飛び交うが、そんなことは委細承知で、やられたらやり返すまでと割り切っている。
今年に入っても、東洋シヤッター(5936)や東洋エンジニアリング(6330)の急騰、死んだと思ったソフトバンク(9984)や光通信(9435)が息を吹き返した例があるが、いずれもデイトレーダーたちの強腕、暗躍によるとみられている。全般相場が調整し方向感を失えば失うほどデイトレーダーたちの出番は増え、連日連夜の奮闘が続くのである。
[相馬 太郎]
※このコラムは随時掲載します。
2001/2/7
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