エプソンダイレクトが発売した「Endeavor Pro7000」は、タワータイプのハイエンドデスクトップPCだ。CPUには、発表されたばかりのインテル Core i7-980X プロセッサー Extreme Edition(以下、Core i7-980X)を搭載でき、メモリは最大12GBまで搭載できる(64bitOS選択時)。AMDのATI Radeon HD 5870や同5750といった人気のビデオカードも搭載可能だ。そして、自作PCを上回るメンテナンス性の高さを備えていることが最大の特徴となっている。
今回試用したEndeavor Pro7000のパーツ構成は以下の表の通りだ。BTOに対応しているので、CPU、メモリ、ビデオカード、SSD/HDD、光学ドライブ、OSなどは購入時に自分好みにカスタマイズできる。
Endeavor Pro7000は、メーカー製の完成PCにもかかわらず高い汎用性を持ち、まるで自作PCのように将来に渡って拡張をしていけるPCだ。PCケースには、一般的なATXマザーボードに対応するタワーケースを使用し、マザーボードにも拡張スロットを多く備える汎用性の高いものを使っている。PCケース内へはアクセスがしやすく、パーツの追加も容易だ。この汎用性の高さは、一般的なメーカー製PCやショップブランドPCとは一線を画している。
PCケースはアルミニウム製で、金属の素材感を生かした精悍なデザインがなかなか魅力的である。色を塗らずに地の色を使うことで、より高級感を高めている。ハデなデザインではないので、部屋でもリビングでも違和感なく使うことができるデザインだ。
ドライブベイは、5.25インチベイが3つ(空き2つ)、3.5インチベイが1つ(空き1つ)、3.5インチシャドーベイが4つ(空き3つ)あり、十分な拡張性を備えている。3.5インチのシャドーベイについては、前面のフタを開けることでアクセスでき、PCケースを開けることなく簡単にHDDの交換を行える。HDDは、専用のアタッチメントを装着するようになっており、前面からPCケースの奥にスライドさせるだけで簡単に取り付けを行える。また、システムドライブ以外のHDDならOSを起動したままホットスワップでの付け外しが可能だ。このシャドーベイの仕組みは、HDDの増設時はもちろん、RAIDドライブのメンテナンス時などにも使い勝手が良い。
前面は、ドライブベイを除く部分がすべてメッシュになっており、スムーズな吸気を行える。側面や上面には吸気口や排気口を設けておらず、PCケース内のエアフローは、前面から背面に直線的に空気を流すタイプとなっている。ちょうど、ストローの中に空気を通すような構造だ。ケースファンは、排気用の120mmファンを背面に1つだけ搭載し、あとは電源ユニットの内部に80mmの排気ファンを搭載する。また、電源ユニットを底面に搭載することで、熱が集中しやすいCPU周辺のエアフローを確保している。この方法は、自作PC用のハイエンドPCケースでもよく使われている効果的な方法だ。背面と上面の角は、上面にまたがる形で5cmほどのメッシュになっており、CPU周辺の熱はケースファンの排気だけでなく、このメッシュからも自然排気される。
PCケース内へのアクセスは容易で、側面パネルは手で回せるネジ1本で固定されており、簡単に外すことができる。パネルは、左だけでなく右側も外すことが可能だ。左からはPCケースの内部へ、右からはマザーボードの裏側にアクセスできる。右のパネルを外すと、マザーボードの裏側のちょうどCPUの裏部分にだけシャーシに穴が空いている。これは、マザーボードをPCケースに取り付けたまま、CPUクーラーを交換できるようにするためのものだ。メーカー製PCで、CPUクーラーの交換にまで配慮がされているPCケースは、初めて見た。このPCケースは、メンテナンス性や使い勝手が良く考えられており、単体で販売しても売れそうな素晴らしい仕上がりだ。
搭載するマザーボードはATX規格のもので、対応CPUソケットはLGA1366、チップセットにはインテル X58 Expressチップセット+インテル ICH10Rを搭載している。メモリスロットはPC3-8500 DDR3 SDRAMに対応するスロットを6本搭載しており、64bitOS選択時には最大12GBのメモリを搭載できる。
拡張スロットは、PCI Express x16スロットが2本、PCI Express x8スロットが2本、PCI Express x4スロットが1本、PCIスロットを1本備える。なお、PCI Express x8拡張ボードを装着した場合、PCI Express x16スロットはPCI Express x8動作となる。PCI Express x1スロットがないが、PCI Express x1の拡張カードは、PCI Express x16スロットかx4スロットに挿せば使用できる。このマザーボードでは、ビデオカードを最高4枚挿すことができ、それに加えてx4の拡張カードにPCIの拡張カードも1枚ずつ挿すことが可能ということになる。これだけの拡張性を備えるマザーボードは、単体で販売されているものでもめずらしい。
ストレージ用のインターフェースは、Serial ATA 3Gb/sポートを6ポート備えており、BTOで選択できる範囲ではRAID 0/1/10の使用が可能だ。RAIDはインテル ICH10Rの機能を使っているので、自己責任での使用にはなるが、チップセットの仕様上はRAID 5も使用できる。本製品は、前述したように本体の前面から簡単にHDDの交換を行えるので、RAID構成での使い勝手はかなり良い。
背面のインターフェースは、USB 2.0が8ポート、1000BASE-Tに対応するLANポートが1ポート、S/P DIFのオーディオポートが角型と同軸の各1つずつ、8チャンネル出力に対応するオーディオ端子が4つ、オーディオのライン入力が1つ、マイク入力が1つとなっている。なお、S/P DIFを除くオーディオ端子は、マザーボード上の専用端子にオーディオカードを挿すことで実現している。オーディオカードが搭載しているオーディオコーデックチップは、Realtek SemiconductorのALC889だ。オーディオコーデックチップや出力端子をマザーボード上に搭載せずに拡張カードに搭載することで、ノイズの影響を受けにくくして音質の向上を行っている。ほかには、LANコントローラーにはBroadcomのBCM5786KMLGを使用している。
前面に出ているインターフェースは、USB 2.0が2ポートに、ヘッドホン端子が1つとマイク端子が1つである。これらのほかに、マザーボード上にはUSB 2.0のピンジャックを2ポート分搭載している。マザーボード上には、ほかにもケースファン用の3ピン端子が2つあり、取り付け場所を工夫すればケースファンの増設も行える。こういった部分も、ユーザー自身が将来的に機能を拡張できる部分であり、高く評価できる。
電源回路は、見たところCPUコア用の6フェーズ回路と、CPU内蔵のメモリコントローラー用に1フェーズ回路を搭載しており、CPU用としては計7フェーズの電源回路となっている。これなら、ハイエンドCPUにも十分に安定した電力供給を行える。マザーボード上のコンデンサは、電源回路部分だけでなく搭載するすべてのコンデンサに固体コンデンサを使用しており、高い耐久性を実現している。ちょっとやそっとでは壊れない、品質の高いマザーボードである。
この製品では、電源ユニットにも将来の拡張を考慮したハイパワーなものを使用している。搭載しているのは、メーカー製PCではなかなかお目にかかることができない大出力の1000W電源だ。この電源なら、余程無理なパワーアップを行わない限り、電源ユニットの出力を気にすることなくHDDや拡張カードなどの増設を行える。電源ユニットの詳細な仕様は表にまとめたので、各電源ラインの出力などはそちらを参照してほしい。
最後に、試用したモデルが搭載していた、最新のCore i7-980Xのハイパワーぶりを紹介しておこう。Core i7-980Xは、長らく「Gulftown」のコードネームで呼ばれていたインテルの最新ハイエンドCPUだ。今年の3月に遂に製品化され、発表が行われた。Coreシリーズでは初の6コアCPUであり、インテル ハイパースレッディング・テクノロジーにも対応しているため、OS上で認識されるCPU数は12個にもなる。Coreシリーズでは初の32nmプロセスで製造されているほか、Coreシリーズでは初の12MBの3次キャッシュを搭載しているなど、初尽くしのCPUである。
動作クロックは定格では3.33GHz、負荷が高まってインテル ターボ・ブースト・テクノロジーが動作すると最高3.6GHzまで自動で上がる。これだけの性能を何に使うのかと聞かれたときに、即答に困るほどのハイスペックCPUである。では、実際のところ何に使うのかというと、もちろん何にでも使える。同時実行できるスレッド数が多いので、一般用途でもっとも効果を発揮するのは動画編集や動画エンコードだ。しかし、ゲームで遊んだり、Webブラウザを使ったり、動画を見たり、音楽を聞いたり、書類を作成したりする用途でも、その実力を十分に体験できる。何をやってもCPUの使用率がちっとも上昇しない余裕のパワーは、何をやるのにもパワー不足を感じずストレスなく作業できる。性能が高過ぎて困るなんてことはないのだから、余裕のパワーがあるというのは使っていて幸せである。
Endeavor Pro7000が搭載できるCPUは、Core i7シリーズだけである。Core i7シリーズは、もっとも下位のCore i7-930でも、4コアを内蔵しインテル ハイパースレッディング・テクノロジーにも対応している。その場合のOSのCPU認識数は8にもなり、インテル ターボ・ブースト・テクノロジーにも対応しているので高負荷時にはクロックが自動で上がる。最下位のCore i7-930を選んだとしても、動画エンコードなどをしないのならCore i7-980Xと同様に余裕のパワーである。
どれくらい先までかは分からないが、当分の間は余裕のスペックで使い続けられるという安心感。そして、HDDの容量が足りなくなったら簡単に増設を行うことができ、グラフィックス機能に不足を感じれば容易に拡張を行えるという安心感。これだけの拡張性を持ちながら、製品に対する1年間の無償修理保証に、搭載するパーツに対する3年間の保証など、メーカー製PCならではの手厚いサービスも魅力だ。また、注文から2日間でのスピード配達を実現していることも、地味ながら大きな魅力となっている。
Endeavor Pro7000は、これを買っておけば心配ないという製品の代表のようなPCである。メーカー製PCの安価な価格に魅力を感じつつも、何かと気になる部分があるために購入に踏み切れなかったというような、厳しい目を持つ自作PCユーザーも、この製品なら納得できるだろう。
[Text by 小林 輪]