ゲームモニターとしてのその優秀性が認められたEIZOのFORIS FX2301TVは、現在開催中(2010年9月16日~19日)の東京ゲームショウのブース内において、実際にユーザーがゲームを体験プレイするための主力ディスプレイとして活用されている。
バンダイナムコゲームスのブースでは、「ゴッドイーター バースト」の体験試遊コーナーにおいて、PSPよりも大きな画面でゲームプレイが楽しめるように、PSPの外部のディスプレイ装置としてFORIS FX2301TVがずらりと横並びに設置されていた。
FORIS FX2301TVは民生向けテレビ製品ではあるが、このようなショウフロアでデモ用途として活用されていることからも分かるように、業界内においてゲームモニターとしての高いポテンシャルが認められているのだ。
さて、それでは実際にFORIS FX2301TVを借りることができたので、ゲームモニターとしての実力を見てみよう。
まずはじめに、ゲームモニターとして最重要視されるのは表示遅延の少なさだ。最近、やっと他社からも低表示遅延機能を備えたテレビ製品やモニター製品が出てきたが、EIZOは早くからこの遅延フレーム数を潔く公開し、昨年発表されたFORIS FX2431TVでは、その遅延フレーム数が業界最速の約1フレームであることをアピールした。今回、FORIS FX2301TVでは、FORIS FX2431TVの遅延フレーム数をさらに下回る0.5フレームを実現してしまった。業界最速をEIZO自身が更新してしまったのだ。
筆者は、約1年ほど前、とあるテレビメーカーの技術者とのミーティングで、こんな議論をしたことがある。
液晶テレビに搭載されている、補間フレームを生成して残像を低減させる「倍速駆動機能」は、映像の処理パイプラインが1/120秒刻みなのだから、補間フレーム生成などを全てキャンセルして、倍速駆動チップ内の処理をバイパスし、直接表示機能ブロックに手渡すことができれば表示遅延0.5フレームが実現できるのではないか。
これに対してその技術者は、「理論的には可能だが、バイパス機能を実装するにはチップの再設計が必要であり、言うほどは簡単ではない」という返答であった。なるほど。ただ、自分が思いつくくらいだから、きっとどこかがいずれやってくるはず…、とその時はそう思いつつも、それで会話は終わってしまったのだが、まさか、その1年後にEIZOがそれを実現してくるとは…。そんなこともあって、FORIS FX2301TVの「表示遅延0.5フレーム」のスペック表記を見た時は思わず「やりやがったな! EIZO」と叫んでしまったのであった。
スペックの語り口が逆順になってしまって恐縮だが、「表示遅延0.5フレーム」を実現するFORIS FX2301TVは、120Hzの倍速駆動回路を内蔵している。この倍速駆動回路により、補間フレームを生成しての残像低減に対応しているが、この補間フレーム生成を用いずに、この倍速回路の仕組みをバイパスさせることで、表示遅延0.5フレームを実現する。まさに、前述の「理論的には可能」を本当に実現してしまったのがFORIS FX2301TVというわけだ。この理論で行けば、4倍速駆動ならば表示遅延0.25フレームも実現できることになるが、そこはそれ、将来に期待したいところ。実際のところ、表示遅延0.5フレームは、ほぼブラウン管モニター並みといってよく、つまりは、ほぼ表示遅延なしといっても過言ではない。FORIS FX2301TVでは「液晶だから音楽ゲーム、格闘ゲームが遊びにくい」といった悩みからは、ほぼ解放されたと言える。
この表示遅延低減機能には「スルーモード」という名前が付けられており、その呼び出しは、リモコン上の[スルー]ボタンを押すことで簡単に発動できるようになっている。スルーモードをオフにすれば、それまで設定した画調に戻すことができるので、ゲームプレイ時にだけ限定的かつ積極的に使うことができて使い勝手がいい。
FlexScan HDシリーズやFORIS FX2431TVに搭載されたゲームモニターならではの特殊機能の数々は、FORIS FX2301TVにもちゃんと搭載されている。
PSPモードの異名を取る「ポータブルモード」は、EIZOのゲームモニター製品では特に人気の高い機能だが、これもちゃんと搭載されている。ソニーのプレイステーションポータブル(PSP)のPSP-2000型番以降は、ビデオ出力機能が搭載されているが、起動直後のメニュー画面では大丈夫なのに、ゲームプレイ時にはゲーム画面が小さく表示されてしまうという制限がある。FORIS FX2301TVに搭載されているポータブルモードは、そのPSPのゲーム画面を液晶パネル全域に表示する機能になる。
この機能を活用してPSPゲームをプレイすると、PSPの映像が23インチ全域に拡大されてプレイできるため、PSP本体をコントローラに見立てた据え置き型のゲームをプレイしているような気分になれる。まさに「自宅にいるときくらい、PSPを大画面でプレイしたい…」という人には、うってつけの機能だといえる。
FORIS FX2431TVでレトロゲーマーに好評を博した「リアルイメージ機能」は、マニアックすぎて後継機に搭載されるか筆者は心配したのだが、安心して欲しい。FORIS FX2301TVにも搭載されている。この「リアルイメージ機能」とは、一言で言うならば、「あえて高画質な解像度変換を行わない」機能のこと。この機能では、ドット画として構成されたファミコン世代のレトロゲームの映像を、あえて忠実にカクカクしたドット画の味わいのまま表示することができるのだ。最近では、PS3、Xbox360、Wiiでもレトロゲームの「そのまま復刻版」が定期的にリリースされており、昔の名作ゲームを楽しむ機会は増えつつある。「リアルイメージ機能」は、まさにそうしたタイトルをプレイする際に威力を発揮する。
最近の液晶テレビや液晶モニタは、低解像度映像をなるべく滑らかに表現しようとマルチサンプリング方式のフィルタを使って解像度変換を行ってくれる。当然、FORIS FX2301TVでも、通常の映像コンテンツを表示する際にはそうした高画質フィルタ機能が適用されるが、「リアルイメージ機能」有効時には、そうした高画質化機能をあえてキャンセルしてくれるのだ。なお、整数倍拡大の「2×」を利用する際に、「リアルイメージ機能」は有効になる。
FORIS FX2301TVは、マルチメディアモニターの魅力が強い製品だが、テレビ製品なので地デジ放送を視聴することもできる。2011年の7月にアナログ放送終了を控えて、パーソナルサイズのテレビの買い替えを検討している人も少なくないはずだ。これからの「買い替え派」にとってはテレビ画質も軽視できない要素となる。
FORIS FX2301TVの液晶パネルはTN型だが、120Hzの倍速駆動機能搭載に伴い、応答速度が最速で3msの高速パネルを採用している。コントラストについては公称1000:1のネイティブコントラストを謳っており、さらに動的バックライト制御を組み合わせたコントラスト拡張時は2000:1もあり、液晶テレビらしい明るさ重視のハイコントラスト映像に仕上がっている。
実際に、FORIS FX2301TVの実機でテレビ映像を視聴してみたが、さすがはEIZO製品。非常にクリアな質感で、肌色の発色も良好。特に階調表現は液晶らしい滑らかなアナログ感に満ち溢れている。補間フレーム挿入による120Hz倍速駆動の効果と高速応答パネルの効果で動画のキレもいい。
それと、23インチの画面サイズで、テレビ放送をフルHDで楽しめるのがいい。
「え? 何をいまさら?」といわれそうだが、テレビメーカーの液晶テレビだと、20インチ前後のモデルは未だに標準ハイビジョンパネル(1360×768ドット)程度のものが多く、FORIS FX2301TVのようなフルHD(1920×1080ドット)パネルの液晶テレビは少数派なのだ。適当なテレビメーカーのカタログで20インチ前後のモデルを調べてみるといい。フルHDの製品はほとんど見当たらないはずだ。テレビメーカーは「20インチ前後の画面サイズではフルHD解像度はオーバースペック」というスタンスなのだ。しかし、3.5インチの小画面サイズで960×640ドットの高解像度液晶パネルを採用したiPhone4の人気を考えれば、そうしたオーバースペック理論は時代遅れと言わざるを得ない。
本当に「20インチ前後でフルHDがオーバースペックか」は、実際に映像を見てみれば一目瞭然。テレビ出演者の衣服に目をやれば、布の"織り目"模様がしっかりと確認でき、フルHD解像度らしい繊細なテクスチャ表現が過不足なく描かれているのがちゃんと見える。20インチ前後であっても、「フルHD解像度はオーバースペックではない」というのが筆者の見解だ。
ところで、TN型液晶パネルと言うことで視野角について心配している人も多いと思う。しかし、この点についても心配は無用だ。最近のTN型液晶パネルは左右の斜めから見た場合の色調変化は、その昔のTN型液晶のイメージとはかなり変わってきており、その光学補償技術の進化もあってかなり改良されてきているのだ。なお、FORIS FX2301TVの視野角スペックは前後/左右160°となっており、実際、23インチの画面を、その正面付近に座って現実的な視線角度範囲で見る限り問題は認められない。左右からならば、かすめ見るような浅い角度から見てもちゃんと、しっかりとした色調が表現できていることに驚くと思う。
「では下から見たらどうなのか」という反論もあることだろう。
確かに、最近のTN型液晶パネルは上下の視野角改善は、左右からの視野角の改良具合と比較するとまだ及ばない部分はある。かなりニッチな心配ごとだが、畳やこたつ、ふとんの生活文化がある日本では、床から見上げるようにしてテレビを見るシチュエーションは往々にしてある。実は、これに対しても、FORIS FX2301TVで特別な機能の搭載で対応する。TN型液晶パネルの上下視野角特性に配慮し、下から見上げるようにして視聴する際の画調モードを特別に用意しているのだ。この画調モードは「リラックスモード」と名付けられており、リモコンから[リラックスモード]のボタンを押せばワンタッチで移行できる。
EIZOらしいマニアックさが感じられるのは、FORIS FX2301TVとの相対角度に応じて、5種類のリラックスモード専用の画調モードが用意されているところ。「寝ながら見る」がクセになっている人は是非とも活用したい。
前述したように、FORIS FX2301TVには、120Hzの倍速回路を搭載しており、補間フレーム生成を駆使した残像低減を実現する機能を持っている。
実際に、様々なテレビ放送やブルーレイコンテンツを見てみたが、カメラが左右にパンするシーンや、字幕が上下、あるいは左右に流れるシーンで目立つ輪郭部のブレやテクスチャのぼやけが、この機能によってくっきりと描き出されていることが確認できた。この機能は、映画やアニメをはじめとした動画コンテンツ視聴時に活用するのが「普通の使い方」になるのだが、あえてゲーム用途に用いるのも悪くはない。
FORIS FX2301TVでは、この倍速駆動機能をビデオ入力とHDMI入力からの映像にも適用できるため、一般的なゲーム映像にも効かせることができる。なお、補間フレーム生成付きの倍速駆動機能を利用すると表示遅延は、普通の液晶テレビ並みの3フレーム程度になるため、前出の「スルーモード」とは排他的に活用することになる。3フレーム程度の表示遅延ならば、表示遅延に寛容なRPG、アドベンチャーゲーム、一般的なアクションゲームのプレイでは気にならない。実際、筆者は、PS3版「ロストプラネット2」を120Hzの補間フレーム挿入付きの倍速駆動モードでプレイしてみたが、遅延で遊びにくいということはなかった。それよりも、奥行き方向に突き進んでいった際の背景の動きの滑らかさや、右スティックによる照準操作による視界移動のスムーズな感じの方が、プレイ感にプラスになっているように感じた。まぁ、このあたりはゲームタイトルごとのゲーム性や、個人ごとの受け取りの違いも起因してくるので一概には言えないが、買ってきたばかりの新しいタイトルをプレイする際には、「スルーモード」と「倍速駆動機能モード」の両方を体感してみることをオススメする。PCゲームなどに多い、可変フレームレートを採用しているタイトルなどでは、フレームレートの落ち込み感を倍速駆動機能が低減してくれる感じもあったりするので、とにかく積極活用してみるといい。
この倍速駆動機能は「設定メニュー」の「本体設定」にて「倍速デモ」を起動させると、画面の半分を倍速駆動あり、もう半分を倍速駆動なしとして分割表示してその違いを見せつけてくれる。このモードを活用して自分のよくプレイするゲームのプレイ感がどう変わるかを検証してみるのも面白いかもしれない。
一方で、映画ファンなどには原信号至上主義の人達も多い。こうしたHiFiフリーク達は倍速駆動機能による補間フレームをあえてキャンセルして、映画らしい毎秒24コマで楽しみたいと考える。筆者などもテレビ放送に関しては補間フレームOK派だが、映画に関しては補間フレームNG派だったりする。FORIS FX2301TVは、そうしたわがままな要求にも応えてくれる。FORIS FX2301TVでは、「設定メニュー」-「カラー設定」-「詳細設定」にある「倍速モード」を切り替えることで、この倍速駆動機能の振る舞いを細かく設定できるようになっているのだ。
FORIS FX2301TVでは倍速駆動モードの設定ができる!
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用意されているモードは「標準」「強調」「5-5/4-4」「遅延軽減」の4つ。通常は補間フレームを次フレームにブレンド表示する「標準」で問題ないはずだが、より補間フレームを支配的にして積極的に残像を低減させたい場合は「強調」を利用するのもいいだろう。一方、映画ファンやHiFi派にお勧めしたいのは「5-5/4-4」モードだ。これはオリジナルの映像が、毎秒24コマ映像ならば、倍速駆動回路に同一フレームを5回表示させ(5-5)、毎秒30コマ映像ならば4回表示させる(4-4)ことで、実質的にオリジナルのフレームレートに相当するコマ数で表示してくれるモードになる。そう、このモードでは、あの毎秒24コマらしい、フィルムジャダー付きの映画らしい味わいが楽しめるのだ。なお、最後の「遅延低減」は前段で解説したスルーモードに相当する設定だ。ある特定の入力端子にゲーム機しか接続していない場合など、スルーモードを固定的に活用したい場合にはあえてこの設定を選ぶのもいいだろう。
モード名 | 解説 |
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標準 | コマ間の補間フレームを生成して動画のブレを軽減。滑らかな映像を再現。※「標準」でブレが気になる時は「強調」で。ただし、「標準」に比べ、ノイズが多く見られることがあり。 |
強調 | |
5-5/4-4 | 補間フレームを生成せず、同じフレームを繰り返して24Hz表示(毎秒24コマで表示しているように見せる)。映画などのフィルム映像を原画に忠実に再現。 |
遅延軽減 | 補間フレームを生成せず、直前と同じフレームを繰り返して表示。映像表示時の遅延を最小で0.5フレームに抑える。 |
モード名 | 解説 |
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2-3/2-2 | フィルム映像やCG、アニメなどの映像信号を自動判別し、最適な補間処理を実施。 |
2-3 | フィルム映像に対して、最適な補間処理を実施。 |
オフ | 通常の補間処理(コマ間の補間フレームを1コマ生成する)を実施。 |
前述したようにFORIS FX2301TVは、テレビチューナー内蔵のテレビ製品なので、当然、スピーカーを本体に内蔵している。スピーカーは直径5cm、出力2Wのものがステレオ構成で2基搭載されており、一般的なテレビ番組を視聴するには問題のないサウンドが楽しめる。この内蔵スピーカーはモニタースピーカーとしての機能も果たしてくれるため、HDMI入力、ビデオ入力、PC入力経由の音声信号もちゃんと再生できるのが嬉しいところ。
そして、まじめでお堅いEIZOのイメージとは裏腹に、FORIS FX2301TVには、スピーカー部を覆うジャケット部を5色から選べるようになっている。注文時には、赤と黒から選べるが、EIZOダイレクト・EIZOガレリア限定で、茶・青・黄も単品販売されている。電源がオフになっている間、テレビは存在感の大きいインテリアの一部となるし、パーソナルなテレビだからこそ、部屋のマッチングやインテリアとの相性にもこだわりたいという人も少なくないはずだ。購入時には何色にするかを思う存分悩ぶといい。
FORIS FX2301TVには、PC用入力端子としてDVI-D入力端子とD-Sub15ピン入力端子の2系統があるが、それぞれに個別の音声入力が提供されている。このため、2台のPCを接続したときには、それぞれのPC画面表示に連動した音声を再生できるようになっている。そう、FORIS FX2301TVがあればPCスピーカーは不要であり、接続したPCの音声を画面表示に連動させて鳴らすことができるのである。テレビ製品の中にも内蔵スピーカーをPCスピーカー的に活用できる機能を提供している機種もあるが、複数のPC入力に配慮したテレビ製品はない。ここはEIZO製品らしい特徴の1つとなっている。
FORIS FX2301TVのサウンド機能はこれだけではない。凄い…と思うと同時に、今までどうしてなかったんだろう?…と思える嬉しいサウンド機能「バーチャルサラウンドヘッドホン機能」が搭載されているのだ。FORIS FX2301TVはDolbyDigitalとDolbyProLogicIIに対応したデコーダを内蔵しており、マルチチャンネルサラウンドサウンドの再生に対応しているのである。
DolbyDigitalは前側左右、後側左右、そして画面側中央の5chと、重低音の0.1ch分の合計5.1chサラウンドシステムの標準規格で、DVDビデオやブルーレイのサウンドトラックの標準仕様に採用されているサウンドフォーマットだ。通常、5.1chサラウンドサウンドの再生には合計6個のスピーカーが必要であり、聴者を取り囲むように設置する必要がある。本格的なホームシアターを楽しむ際には、こうした大がかりなシステムを組むのもいいかもしれないが、スピーカーを置くための設置スペースの問題や音量を上げたときの周囲環境への影響などに配慮すると全ての人が気軽に導入できるものではない。
そこで登場するのが「バーチャルサラウンド」というテクノロジーだ。
たくさんのスピーカーを設置しても、結局、人間はそれを左右の耳で聞くことになる。しかし、それでも、人間は前後左右の音像を聞き分けることができる。これは耳の中の鼓膜に音波がたどり着くまでに耳殻に反射したり回折したりすることで起こりうる、人間の耳特有の音調変換の結果だと言われている。この音像の変調現象を音声プロセッサでシミュレーションを実施し、音波を加工してやればヘッドホンでもサラウンド感が表現できるはずだ。バーチャルサラウンドとは、こうした着想の元に生まれた技術なのである。
FORIS FX2301TVに内蔵されたサラウンドサウンドプロセッサは、入力されたDolbyDigitalの5.1chサウンドを、ヘッドホン向けにバーチャルサラウンド処理を行って、ヘッドホン端子へと出力する。プロセッサがデコードしたサウンドはFORIS FX2301TVの内蔵スピーカーからも鳴るが、"音像に取り込まれている感"はヘッドホンを通して聞いたときの方が上だ。
このバーチャルサラウンドを楽しむためのヘッドホンは、手持ちの適当なものでいいということになっているが、実際に、筆者が試してみた感じでは、音声信号の出力ダイナミックレンジが高くなる関係で、いわゆるイヤフォンではなく、ユニットの大きい密閉型ヘッドホンの方が高いサラウンド感が得られると感じた。
EIZOでは現在、FORIS FX2301TVを買うとVictor製の密閉型ヘッドホン「HP-RX700」がもれなくもらえるキャンペーンをやっているほか、Bose製「Around ear Headphones」をセットにしたセット商品が設定されている。
実際に、筆者の私物の高音質ヘッドホンでFORIS FX2301TVのバーチャルサラウンド機能を様々なコンテンツで試してみたところ、音像が頭部から離れたところに定位する実感がちゃんと得られていた。一般的なテレビ製品にヘッドホンを接続してサウンドを聞くと、音像が自分の頭の中味に定位してしまい、映像の広がり感とのギャップに違和感を感じてしまうが、FORIS FX2301TVでは、このバーチャルサラウンド機能のおかげで、頭部から離れた位置に音が定位する。この頭部外への定位感があまりにも自然なので、この機能を体験したユーザーは、ヘッドホンではなくスピーカーから鳴っているのかと勘違いして、ヘッドホンを取り外して確認してしまうのではないだろうか。
こうしたバーチャルサラウンド体験で気になる後方チャンネルの定位感だが、筆者の場合は、正面を12時方向だとすると大体、後方左チャンネルが8時方向、後方右チャンネルが4時方向から聞こえていた。後方音像の回り込み感は、この種のバーチャルサラウンド機能としては必要十分なのではないかと思う。ちなみに、このバーチャルサラウンド機能は、DVDやブルーレイなどを楽しむために活用することを最初に連想するかもしれないが、実は、ゲームプレイにおいても絶大な威力を発揮する。
FORIS FX2301TVのバーチャルサラウンド機能のうち、もっとも「取り囲まれ感」に優れるのがDolbyDigitalの5.1ch再生時だ。これはHDMI入力経由の音声に限定されるので、ゲーム機ならばPS3全機種、Xbox360は後期型(Xbox360前期型はHDMI端子がない)が、この機能を活用できる。実際にPS3版の「ロストプラネット2」をFORIS FX2301TVのバーチャルサラウンド機能を活用してプレイしてみたが、映像の広大な雰囲気とマッチした音響の広がりを体感することができた。ロストプラネット2では、敵が叫びながら銃撃してきたり、機動兵器が機械音を立てながら接近してきたり、銃撃が背景物に衝突して跳弾する音が四方八方から鳴るため、状況把握にとても聴力が役に立つ。効果音の鳴る方向から敵の位置を知ったりすることも多く、FORIS FX2301TVのバーチャルサラウンド機能は、ゲームプレイの際の武器になるとすら感じた。これは一般的な、テレビの2スピーカーでプレイしていては得難い体験だ。
FORIS FX2301TVのバーチャルサラウンド機能向けの音場プログラムとしては「ゲーム1」「ゲーム2」「ムービー」の3つが用意されている。筆者がプレイしてみた感じでは残響効果を柔らかく与えた「ゲーム2」がアンビエント感と音の定位感のバランスがよいと感じた。ゲームも映画もまずはこのモードで試し、より強い残響が欲しければ「ムービー」を、残響効果を最低限にしたい場合は「ゲーム1」を選択するといいと思う。
モード名 | 解説 |
---|---|
ゲーム1 | 音がどこで鳴っているかがわかりやすいモード。主人公視点のシューティングゲーム(FPS)で、映像だけでなく音でも敵や障害物の位置が判断しやすくなる。 |
ゲーム2 | 適度に残響を加えたモード。臨場感が増すため、アドベンチャーゲームやロールプレイングゲームなどに適している。 |
ムービー | 3つのモードの中で一番長い残響効果があり、低音の強調を加えたモード。映画などを迫力ある音響で楽しめる。 |
なお、D5入力端子やPC入力端子とペアになっているアナログ音声入力端子からの音声に対しても、FORIS FX2301TVはバーチャルサラウンドの機能を利用できる。この場合は、DolbyDigitalではなくDolby ProLogic II音声としてデコードされバーチャルサラウンド再生が行われる。Dolby ProLogic IIはサラウンド音声をアナログ音声信号にマトリックスエンコードしたもので、そのまま再生すればステレオサウンドとして再生でき、Pro Logic IIデコーダーで処理すれば5.1chサラウンドサウンドとして再生できるものだ。「ゼルダの伝説」シリーズや、「マリオギャラクシー」シリーズなど任天堂製のWiiタイトルにはこの方式を採用したものが多くあるので、Wiiのゲームを楽しむ際にもバーチャルサラウンド機能を積極的に試してみるといい。
Pro Logic IIデコーダはごく普通の左右2chステレオの音楽再生に効かすこともできる。通常の2chステレオの音楽をバーチャルサラウンド機能で再生すると、その出音は疑似サラウンドによる再生となり、ヘッドホンステレオで聞くテイストとは一味違った音楽が楽しめる。一般的な音楽コンテンツは残響効果を最低限にした定位感重視の「ゲーム1」がしっくりと来る。「ゲーム1」は、楽器音を的確に再生しながら、楽器を音像を的確に広い空間に配置したサウンドになるので音楽鑑賞と相性がよい。PCをジュークボックス的に音楽再生に活用しているPCユーザーは、こうした活用もできることを覚えておこう。
23インチ前後のテレビは、テレビメーカーからたくさん出ている。そして23インチ前後の液晶モニターも各社から様々なものがでている。これだけ色々な製品が出ている中で、FORIS FX2301TVと競合する製品は極めて少ないのが興味深い。
1つ、倍速駆動機能までを内蔵したフルHDリアル対応の23インチクラスのパーソナル向けテレビとしてライバルがいない。
2つ、表示遅延0.5フレームという最速レスポンスを持つゲームモニターとしてライバルがいない。
3つ、パーソナルに5.1chサラウンドがヘッドホンで楽しめてしまうテレビ製品、モニター製品としてライバルがいない。
この3つの要素、どれか1つでも気になったならば、今現在、FORIS FX2301TVしか選択肢がないのだ。3つとも妥協できれば、他機種を選ぶのもいいだろうが、それができるかどうか…。