新しく発表された、FORIS FS2331は、23.0型フルHD解像度の液晶モニターだ

 6月に発売されたFORIS FX2301TVはその名の通り、地デジ放送が見られるテレビ機能を搭載し、なおかつゲームユーザー向けにフォーカスした機能設計が行われていた。特にゲームユーザー向けに搭載された機能は一級品で、このあたりについてはぜひとも筆者がレポートしたFORIS FX2301TVのレビューを見て欲しい。

 今回、発表されたFORIS FS2331は、ゲームユーザーやAV用途にも対応しつつも、軸足はPC用液晶モニターに置いた機能設計がなされている。まず、液晶パネルに垂直配向型(VA型)を採用することで、静止画の表示品質を高品位にしている点がその証拠だ。VA型パネルは、原理的に黒表現や暗部階調のリニアリティに優れており、結果、コントラスト性能に優れる特徴がある。FORIS FS2331は、その証拠にネイティブコントラストが3000:1、動的バックライト制御を組み合わせたダイナミックコントラスト性能にいたっては10000:1を誇る。液晶の場合、明るい方向でコントラストを稼ぐチューニングが多いが、FORIS FS2331は違う。暗部方向にも高いダイナミックレンジを持たせている。そう、黒浮きをいい具合で押さえ込んだ画調になっているのだ。

 実際に見てみると、暗部に黒浮きが少ないため、暗い領域の色味までがかなり正確に表現されていることが分かる。さらに暗室にして、黒に収束するカラーグラデーションなどを表示してみたが、真っ黒に落ち込む直前まで、ちゃんと"色味が残って"描き出されていることが確認できた。さらに、FORIS FS2331が出す黒色は、暗室であっても額縁側や部屋の暗さとほとんど変わらないくらい黒い。この黒の再現性と暗部表現の優秀性は、一般的な文字図版表示だけを想定した安価な液晶ディスプレイにはまずない性能である。

 発色も良好で、sRGB相当の色域に対応する。赤、青、緑の純色もバランス良い発色で、二色混合のグラデーションも擬似輪郭が目立たない。FORIS FS2331は色ダイナミックレンジも広いようだ。肌色の発色も良好。ハイライト部分の白い肌色から陰となる茶色よりの肌色までが美しく発色している。

 妥協のない色再現性と文句なしの階調性能、そして高いコントラスト性能は、グラフィックデザイン用途や写真の閲覧/レタッチ用途にも効力を発揮すると思う。

FORISシリーズで唯一、カラーマッチングツールの「EIZO EasyPIX」に対応する

 FORIS FS2331はPC向け液晶モニターとしての基本ポテンシャルが高いのだ。ナナオ側も、FORIS FS2331が、デザイン用途のPC向け液晶モニターとして十分なポテンシャルがあることが分かっているようで、オプションの自動カラーマッチングツール「EIZO EasyPIX」にも対応させている。これは、表示面の色調を測定できるセンサーユニットを同梱した本格的なカラーマッチングツールで、印刷結果とのカラーマッチングや好みのマニュアル画調を作り込む際に利用するハイアマチュア向けのオプションだ。だからナナオはこのEIZO EasyPIXを、ちゃんと調整色が正確に発色できるディスプレイ製品にしか対応を謳わない。裏を返せば、EIZO EasyPIX対応のFORIS FS2331はそれだけ色再現性に優れていることを自ら認めているということでもある。

 FORISブランドのFS2331は、"マルチメディア向け"というイメージが先行しがちだが、それだけではないということを強調しておこう。

接続端子としては、HDMI×2、DVI-D×1、D-Sub15ピン×1を備える。さらに、音声入力端子としてステレオミニジャック端子も用意されている

 FORIS FS2331が液晶モニター製品として高性能であることが分かったが、やはりFORISブランドを名乗る以上は、マルチメディア性能にも期待しないわけにはいかない。

 マルチメディア性能が高いディスプレイ製品は、接続性の高さにその片鱗を表す。FORIS FS2331は、大前提としてPC液晶モニター製品であることから、アナログRGB接続のD-Sub15ピン端子、そしてデジタルRGB接続のDVI-D端子を備えている。これに加え、デジタルAV端子としてHDMI端子を2系統実装する。コンポジットビデオ入力やコンポーネントビデオ入力などのアナログビデオ入力端子はなし。これは、FORIS FS2331の基本コンセプトがPC向け液晶モニター製品だからだろう。とはいえHDMI端子があるということは、ブルーレイ機器のような最新世代のデジタルAV機器、PS3や最新のXbox 360のような今世代ゲーム機は問題なく接続できる。なお、2系統のHDMI端子はPC入力にも対応しており、合計4系統のPC入力も可能だ。

 この他、アナログの音声入力端子としてステレオミニジャック端子を備える。これはD-Sub15ピン端子やDVI-D端子経由でPCを接続した際の音声ラインとして活用するのが模範的な使い方になる。

 FORIS FS2331にはスピーカーが実装されており、この音声ラインから入力された音声をFS2331単体で鳴らすことができる。つまりPCスピーカーいらずで、PCの音声が再生できるのだ。

 ちなみに、HDMIはデジタル音声を伝送できるが、このHDMI経由でやってきた音声も、ちゃんとFORIS FS2331側のスピーカーで鳴らすことができる。カジュアルな映像鑑賞やゲームプレイなどでは、自慢のオーディオシステムをわざわざ起動せずとも、FORIS FS2331だけで楽しめてしまうわけだ。

   
本体左側面にヘッドホン出力端子(ステレオ)を備える
 
本体下部に、ステレオスピーカーを内蔵する

 実際に、様々な機器を接続していて気がついたのだが、このFORIS FS2331、HDMIやDVI-Dのデジタル接続時の映像が綺麗なのはもちろんのこと、1920×1080ドット・フルHD解像度のアナログRGB接続時の映像が美しいのに少々びっくりさせられた。1920×1080ドット・フルHD解像度でのアナログRGB接続を行うと、アナログ伝送信号としては高周波になるため、機種によってはよくドットボケが起こるのだが、FORIS FS2331ではこれがなく、実にクリスピーなのだ。きっとアナログ信号処理やDA変換機構が優秀なのだろう。「今さらアナログRGBの評価?」と言われそうだが、実際に活用しての感想なのでご容赦いただきたい。さすが、ナナオ。PC向け液晶モニターとしての高品位ぶりは、マイナー端子にも現れている。

 FORIS FS2331が、せっかくフルHD解像度の高品位な色特性と優秀な階調性能を持っているということで、PS3をHDMI接続してブルーレイを視聴してみた。

 まず、HDMI経由のPS3の音声は、ちゃんとFORIS FS2331側のスピーカーから鳴っていることを確認した。視聴ソフトは、暗部描写力がシビアに判別できるブルーレイの「ダークナイト」を選択。このソフトの夕闇のトンネル内戦闘シーン(チャプター20)を暗室にて視聴してみたが、冒頭のSWATのバンの黒いボディのグラデーションに一際光るハイライト表現の鋭さはVA型液晶ならではという感じだ。黒と紺を基調としたビル群を見下ろして飛ぶフライバイシーンは、非常に暗いカットなので、黒の沈み込みがしっかり描け、なおかつ最暗部付近の暗い色を正確に表現できなければ、遠近感と立体感をしっかりと伝えられない。だが、FORIS FS2331は、この難しいシーンも見事にこなしていた。

 公称視野角は上下/左右ともに178°となっている。実際に斜め方向から見てみると、黒の沈み込み具合はやや失われる感じがするが、23インチの画面を極端に斜めから見るというシチュエーションは限定的なので気にする必要はないだろう。やや正面からずれて見る程度では色味の変化はほとんどないので、正面に2人並んで座って見るくらいならば問題なし。

 FORIS FS2331は、FORIS FX2301TVのような倍速駆動機構や補間フレーム挿入機構はないが、オーバードライブ回路により中間階調7msの応答速度を実現しているため、動画表示にも耐えうる工夫が盛り込まれている。このため、よほど明暗差の激しい早い物体が画面の中を動き回らない限りは、必要十分な動画表現ができている。少なくとも、「ダークナイト」を視聴した限りでは、目にあまるようなホールドボケは視覚されなかった。一般的なブルーレイ映画ソフトを見る限りは、問題がないはずだ。

 映画ソフトを見るときは、画調モードは「Cinema」画調モードが最適だ。「sRGB」画調モードの方が、コントラスト感は強くなる印象だが、「Cinema」の方が、暗部情報量が多く、映像鑑賞には向いていると思う。

FS2331には、sRGB/Paper/Cinema/Gameの画調モードに加え、自由に調整できるUserモードも2つ搭載されている

 FORIS FS2331の液晶パネルは1920×1080ドット、いわゆる1080pリアル対応のフルHD解像度なのだが、480p/720p/1080iといった1080p未満の映像もHDMI経由で入力できる。つまり、DVD機器でもHDMI端子を備えたものならばFORIS FS2331に接続することができるのだ。

 1080p未満の映像を入れたときも、ちゃんと1920×1080ドットのフル解像度に解像度変換して表示してくれるので、このあたりの使い勝手はテレビと全く変わらない。それどころか、一般的なテレビ製品にはないユニークな機能を使って、1080p未満の映像をFORIS FS2331にて高画質で楽しむこともできる。それがPower Resolution機能だ。

 Power Resolution機能は、最近流行のいわゆる「超解像技術」的な効果をもたらすもので、映像中の高周波部分に対し選択的にシャープネス向上をもたらすものだ。具体的にはテクスチャ表現や色ディテールが際立ち、見た目の解像感が上がることになる。映像中の低周波部分、つまりは、なだらかなグラデーション表現などに対しては解像感強調は行わないので、映像全体がノイジーにはならない。

 
     
Power Resolution「オフ」
 
Power Resolution「1」
 
Power Resolution「2」
 
Power Resolution「3」

 DVD映像は480p映像なので、FORIS FS2331のパネル解像度の1080pに対して1/6の画素情報しかない。しかし、このPower Resolution機能を活用すると、疑似的なハイビジョン映像のように楽しめてしまうのだ。今まで見慣れた眠いDVD映像も、しゃっきりとして見えるので意外に面白い。慣れ親しんだDVDコンテンツであるほど、その見た目の違いに感動できるはずだ。FORIS FS2331ユーザーになったときには是非試していただきたい。

 なお、Power Resolution機能はフルHD、1080pの映像にも効かせることができる。なので1080pに拡大してHDMI出力してしまうDVD機器(PS3のDVD再生時もこれに相当)でのDVD再生時にもちゃんと活用できるので安心されたし。

 ナナオのFORISシリーズは、卓越したゲーム対応機能が評価され、ゲームユーザーにとって一目置かれるような存在になった。FORISブランドを名乗るFORIS FS2331も当然ゲーム対応機能が期待されるわけだが、実際のところどうなのか。

 まず、ゲームユーザーにとっての生命線である低表示遅延性能だが、これは「公称1フレーム以下」を公言する。これはFORIS FX2301TVの業界最速「公称0.5フレーム」には及ばないが、一般的な液晶テレビと比較すればかなり高速だ。

 ただ、ナナオによれば、回路上の表示遅延は、2.1ms程度…つまり、表示遅延は0.13フレームということになり、FORIS FX2301TVよりもさらに小さい値と言うことになる。ということは、FORIS FS2331の方が業界最速なのではないか…と思ってしまうわけだが、FORIS FS2331のVA型液晶の応答速度が、FORIS FX2301TVのTN型液晶に及ばないため、表示遅延の実効性能としてはFORIS FX2301TVを上回るとは言い切れないのだそうだ。

 とはいえ、回路的には表示遅延0.13フレームは凄いし、液晶画素の状態変化が好条件の時にはこれに近い表示遅延に収まっているはずなので、それを考えると、FORIS FS2331の「公称1フレーム未満」は、実は「0.13フレームの時もあるかも知れない1フレーム以下」ということであり、夢膨らむスペックである。いずれにせよ、格闘ゲーム、音楽ゲーム、シューティングゲーム、アクションゲームなどなど、リアルタイム性が要求されるゲームプレイにおいて、FORIS FS2331は期待通りのレスポンスを実現してくれるはずだ。

 それと、FORIS FS2331には表示遅延だけでなく、画質面でのゲームユーザー向けの支援機能が搭載されているので、これも特記しておこう。

 一つは「Game」画調モードだ。

 これは、ゲームプレイ時に適したメリハリ感と階調を作り出してくれるもので、具体的には前述のPower Resolution機能とPower Gamma機能が適用される。Power Gamma設定は2モードから選択ができ、Power1が一般的なゲーム映像向けのメリハリを強調した画調、Power2が暗いシーンの多いゲーム映像を見やすくする画調となっている。Gameモードでは、Power1が適用されるので、暗いシーンの多いゲームをよく使用する人は、それとは別にUserモードにPower2を保存しておいてはどうだろうか。

 もう一つは「スムージング機能」だ。

 これは、低解像度映像のスケーリング処理(拡大処理)に際して、どのくらいスムーズにさせるか(実質的にはどのくらいボケさせるかに相当)を決められる機能だ。これは、1080p未満の解像度を入れたときにしか「画面調整」メニューに現れない機能なので見逃しがちだが、スムージング値を下げればボケが強くなり、上げるとドットがくっきりした表現になる。最大にしたときにはFORIS FX2301TVの「リアルイメージ表示」機能のようにドットドットした映像が楽しめるので、クラシックゲームを楽しむ際には活用するといいだろう。

   
Power Gamma「OFF」(ガンマ設定 2.2)
 
Power Gamma「Power1」
 
Power Gamma「Power2」
FS2331に同梱されるカード型のリモコン

 最近のFORISは使い勝手とデザイン性にも気が配られている。FORIS FS2331はエントリークラスのFORISシリーズではあるが、FORISブランドの一員として、その遺伝子をちゃんと汲んでいる。

 商品セットにはカード型のリモコンが同梱されており、入力切換や画調調整などは、リモコン上の操作ボタンを押すことで簡単に行える。ディスプレイ下部の少ないボタンの難解なOSDメニュー操作を行わなくてもいいので使い勝手がとてもいい。音量操作やミュートなどは直観的に行えるし、入力切換も[PC]ボタンと[HDMI]ボタンを押し分けることで瞬間的に希望の入力系統に切り替えることができる。

 また、地味ながら表示面下部のデザインラインの色をレッド、ブルー、グレーの三色から選択することができ、部屋とのマッチングや色の好みに配慮して入れ替えることができる。

   
レッド、ブルー、グレー、三色のカラーシートが付属し、ユーザーが自由に変更できる

 こうして見てくると、FORIS FS2331は、FORISブランドの入門機という位置付けながら、上位機を喰いそうなほどの性能と魅力を備えていることが分かってくる。ナナオの新製品は、毎回、上位モデルを食いそうな完成度で、他人事ながら、全く自虐的なメーカーだと思うのだが、それは裏を返せば1つ1つの製品を、モデルラインナップ構成を超えて、「愛」を込めて製品を開発していることの現れ…と思えなくもない。

 この性能と品質でこの価格。FORIS FS2331は、ナナオの、技術革新とユーザーに対する「愛」の結晶だ。

トライゼット西川善司

大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。AV WATCH誌ではInternational CES他をレポート。GAME WatchではPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。ブログはこちら。近著には映像機器の原理を解説した「図解 次世代ディスプレイがわかる」(技術評論社:ISBN:978-4774136769)、3Dゲームグラフィックス技術の仕組みをまとめた「ゲーム制作者になるための3Dグラフィックス技術」(インプレスジャパン:ISBN:978-4-8443-2755-4)がある。

●今回紹介したモニター

FORIS FS2331

様々なコンテンツをリーズナブルな価格で楽しめる、エンターテイメントブランドFORISのエントリーモデル。様々なデジタルコンテンツにPowerを与え、ユーザーがより楽しめる!

販売価格:¥44,800(税込)

 

FORIS FS2331 + Bose Companion2 IIセット

Bose社のPC専用設計のマルチメディアスピーカー「Companion2 II」をセットにした、EIZOダイレクトだけのおトクなセットです。

販売価格:¥49,800(税込)

FORIS FS2331 + EIZO EasyPIXセット

カラーマッチングツール「EIZO EasyPIX」を組み合わせたおトクなセット。これ1台で簡単にカラーマッチングがおこなえます。

販売価格:¥53,800(税込)

 

FORIS FS2331+保護パネル・クリーナーセット

専用の保護パネルとクリーナーを組み合わせたおトクなセットです。キズや汚れから画面を守り、長く大事にお使いいただけます。

販売価格:¥53,800(税込)

関連リンク
■FORIS FS2331
http://direct.eizo.co.jp/shop/g/gFS2331-BK/
■EIZOダイレクト
http://direct.eizo.co.jp/
■株式会社ナナオ
http://www.eizo.co.jp/
関連記事
■ナナオ、実売44,800円のVAパネル採用23型ワイド液晶
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/20101028_403110.html
■ナナオ、VAパネル搭載のマルチメディア液晶モニター「FORIS FS2331」を11月12日に発売
ネイティブコントラスト比3,000:1。ゲーム向けの機能も多数搭載したエントリーモデル
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20101028_403122.html
■ナナオ、23型/4万円台の「FORIS」エントリーモデル-FS2331。表示遅延1フレーム以下。チューナ非搭載
http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20101028_402978.html
>>EIZO Direct Watch支店のトップへ戻る