発売直後からその圧倒的コストパフォーマンスで注目を集めた「FORIS FS2331」。そしてこの大人気モニターの秀逸な機能性能を受け継ぎつつ、見やすさ快適さ扱いやすさをさらに高めた後継機「FORIS FS2332」。家庭用〜エンターテインメント向けの「非常に買いやすく満足度の高いモニター」としては既に定番的なモデルとなった。
そして今回、このイケてるモニターのさらなる後継機が登場した。その名も「FORIS FS2333」。前機種のFS2332と比べると、たとえばスタンドが新しくなったり、リモコンがグッと使いやすくなったり、音声出力端子が追加されたり、あるいは表示応答速度が倍近く速くなったり、注目点が多々あるのだ。
それぞれ頷ける改良点だし、前機種ユーザーからすれば「ソコが良くなったのかぁ〜」と若干垂涎な感じですな。こういった改良が加えられているのに、お値段は据え置きの39,800円(EIZOダイレクト価格)。ザックリした第一印象として「アラまあ超お得♪」てな感じの新型モニターに仕上がっている。
のだが、しかし、実際使ってみると「マジすかコレ」という気分になるのであってビックリ!! 試用開始直後30分で驚かされた。「お〜っ」と声出しちゃうレベル。
具体的には、新たに加わった「Smart Insight機能」である。大雑把に言えば、日常使いにおける静止画と動画の視認性をズゴーンとUPさせてしまう。UPっていうかむしろ「画質の進化」。またこの進化は、多くの人の「こういうトコロ、どうにかなんないかな?」を解消してくれる実用的な進化だと感じられる。
てなわけで、以降、この新機能を含め、最新型のFORIS「FS2333」のアレコレを見ていこう。
まずはFS2333の基本的なスペックなどをザッと。
液晶モニターとしては、サイズが23.0型で、1920×1080ドット表示のフルHDパネルを搭載し、パネルの種類はIPS液晶パネル。バックライトにLEDを採用している。IPS液晶パネルは広い視野角と色再現性の高さを両立した「画面の隅々までキレイに見えるパネル」ですな。より高価なモニターにも多々採用されているタイプだ。「EIZO EasyPIX」を使ってカラーマッチングを行えばFS2333の色再現性がより高くなるので、写真閲覧やレタッチなどにもバッチリ役立てられる。
それからバックライトのLED。ご存知のように省電力でエコな光源だが、安定した表示性能が得られたり、超低輝度での表示も可能であるなど、FS2333のパフォーマンスアップにも一役買っている縁の下の力持ち的な要素でもある。
映像入力端子はHDMI×2、DVI-D×1、D-Sub×1の合計4系統を装備する。PC、ビデオレコーダー、ゲーム機、さらにスマートフォンなどまでしっかりつなげられる汎用性を持つFS2333なのだ。また、FS2333では新たに音声出力(ラインアウト)端子が装備された。音声入力端子やHDMI入力端子から入った音声は本体内蔵のスピーカーから出力されるが、外部スピーカーを接続する際にラインアウト端子を使えば、「より高音質・大音量での音声出力」が可能になった。ちなみに、旧機種でも好評だったヘッドホン端子はもちろん新型FS2333にも搭載されている。
本体背面の入出力端子。新たに装備されたラインアウト端子は一番右側に配置されている | ヘッドホン端子も引き続き本体側面に搭載 |
サイズ的に観やすい大きさで、解像度はフルHD、さらにIPS液晶パネル&LED。入出力端子もシッカリ充実。ホームユース・エンターテインメント向けエントリーモデルとして十分なスペックを持つのだが、じつはこの新型、表示速度も非常に速くなっているのだ♪ 具体的な応答速度は3.4ms。このクラスの液晶モニターとしては最速レベル。表示追従性は遅延0.05フレーム未満と超高い。ので、たとえば素早い反応と操作が必要なアクション系のゲームなどをしても「モニターの表示速度が遅いから気持ちよくプレイできない」なんてコトは全然ナイ。いやむしろ、後述の「Smart Insight機能」を含めて考えれば「ゲームをプレイするならぜひ使いたいモニター」だと言えよう。
従来機種から受け継いでいる、手軽な最適表示系機能や超解像系機能も健在だ。
たとえば表示モード(カラーモード)設定。表示する内容に応じて表示モードをサッと変えられる機能で、表示モードはデジカメ画像に向く「sRGB」、電子書籍や各種書類の表示に向く「Paper」、映画鑑賞向けの「Cinema」、ゲームプレイに最適な「Game」、そしてユーザー設定2種類を利用できる。また、画面の明るさを自動調整して消費電力を抑えるAuto EcoView機能も従来機から引き継いでいる。これに加え、新たに表示モードとして「Eco」を搭載し、ワンタッチで明るさを抑えたエコな表示にすることも可能になった。
もちろんFS2333では、EIZOモニターの多くで利用できるScreenManager Pro for LCD(DDC/CI)やEIZO ScreenSlicerに対応する。ScreenManager Pro for LCD(DDC/CI)はマウスやキーボードを使って表示設定を細かく変更できる無償ユーティリティソフトウェアで、ジックリと表示設定をイジるには非常に便利。EIZO ScreenSlicerは画面を分割して複数ウィンドウを効率良く配置できる無償ユーティリティソフトウェアだ。
それから、EIZOモニターならではの強力な画質向上技術。具体的には、前の機種のFS2332に搭載された、独自の超解像技術「Smart Resolution機能」や、超解像にするべきエリアを自動判別し適用できる「Smart Detection機能(=動画領域補正)」があった。この「Smart Resolution機能」は、画像の鮮明さやクッキリ感を補正する解像感補正技術。一種の「超解像技術」だが、映像の「ノイズ成分」と「ボケ量」の推定・処理により、映像の鮮明さやクッキリ感のみが増す。また、「肌」や「文字」などの超解像が不要な部分は、自動で超解像処理を除外してくれるので、人肌は自然に見えるし、文字の色付きや滲みを防ぐことができる。
そして「Smart Detection機能」。超解像の「Smart Resolution機能」や後述の「Smart Insight機能」で処理する補正範囲を選択できる機能だ。具体的には画面の動画部分のみか、画面全体を対象とできる。動画部分のみに設定すれば、たとえばウェブブラウザ上の動画ウィンドウ内だけを超解像処理することができるというわけだ。
これらふたつの「Smart機能」を組み合わせることで、超解像にすべきでないエリアは従来通りの表示に、超解像にしたいエリアをより高画質化させることができる。つまり「画面全体として不自然にならず、映像の自然さを保ちつつ美しさを増す」ことができる。
細かいコトはさておき、たとえばFS2333で古く解像度も低いDVDコンテンツとか、一昔前のデジカメで撮った写真なんかを見ると、「えっ?」ってほどキレイ。見栄え上の不自然さはないのだが、なーんかクリアだし高解像度になったっぽいキレイさで映し出されたりする。
Smart Resolution 「オフ」 |
Smart Resolution 「1」 |
Smart Resolution 「2」 |
Smart Resolution 「3」 |
Smart Resolution 「4」 |
Smart Resolution 「5」 |
さて、最新型となるFS2333には「3つめのSmart機能」が加わった。具体的には「Smart Insight機能」。コレがまたスゴい。動画でも静止画でも、「スゴっ!!」てなインパクトがある映像が表示される。この「Smart Insight機能」、一言で言えば「映像シーンに応じて機能する、映像の暗部視認性向上機能」だ。「見えにくいなぁ」と思いがちな映像をズギャッ「見やす〜い♪」に変えちゃうのである。
たとえばコントラストが高い映像。直射日光下や逆光条件で撮影した映像って、暗い影の部分が多かったりしますな。あるいはある程度以上明るい環境でモニターを使用する場合。要は明暗差が激しいので、暗い部分が「見えにくいナ」と。こういう映像を見ると「実物は影の部分がこんなに暗くない気がしたけど?」なんて思ったりする。この違和感をなくすため、映像に対してガンマ補正をかけたりすれば、一応はその暗い部分を明るめにしたりはできる……ものの、今度は明るい部分が明るすぎになったり、そもそも色が不自然になったり。これは、デジカメなど機器の特性と人間の視覚特性が異なるから起きるものだそうですな。
そこで「Smart Insight機能」。この機能は、人間の視覚特性に基づき映像を局所的にコントラスト補正する。具体的には、「画像を分析して画素ごとに明るさの補正量を変化させることで、暗くて見えにくい部分を見やすくしている」という。また、映像の光源部分と反射部分を分離してコントラスト補正などの処理をして再構成することで、「人間がその場にいて見たのと同じ見え方に近づける」のだそうだ。
実際、「Smart Insight機能」で処理された映像を見ると、も〜不思議。「ええっ?」と声が出ちゃう感じ。コントラストが高くて部分部分見えにくい映像や、極端な逆光で明るすぎる箇所と暗すぎる箇所が多い映像などが、スッと見やすくなる。暗い箇所がやや明るく浮かびあがったりするイメージだが、「全体的に白っちゃけた明るい映像」とか「色がミョーにヘンな感じの映像」といった違和感が出ないからスゴい。見づらかった感じの映像が、自然さを保ちつつ、とても見やすくなるっ♪
「ちょっと見えにくいなぁ」 と思っていた映像も…… |
「Smart Insight」機能で違和感なくズギャッと 見やすくなるっ♪ |
Smart Insight 「オフ」 |
Smart Insight 「1」 |
Smart Insight 「2」 |
Smart Insight 「3」 |
Smart Insight 「4」 |
Smart Insight 「5」 |
いや〜大したモンですな。前述の「Smart Resolution機能」および「Smart Detection機能」により、画像全体の解像感が高まる。そしてこの「Smart Insight機能」により、明るさ的なアンバランス感を自然に補正できる。静止画も動画も「見え方」がガラリと変わって精細で見やすいものになる。
これら「3つのSmart機能」、いろいろ役立ってくれる。たとえば単純に手持ちの写真をより見やすく美しく表示してくれる。イマイチ写真もナイス度UP、みたいな。明暗差の多い動画を見やすくしたりもする。この「Smart Insight機能」も「Smart Detection機能」により、動画部分のみに適用することが可能なので、たとえばいまいち画質のよろしくないウェブ動画部分のみに「Smart Insight機能」や「Smart Resolution機能」を自動適用させられる。こうすると、映像のキレイさがガラリと変わってけっこーショック。ぜひ体験してみてほしいところだ。
あと、ゲームなんかもかなりプレイしやすくなると思う───暗いエリアに潜む敵なんかを発見しやすくなるので、目が疲れにくいのはもちろん、ゲームを有利に進行させることさえ可能。たとえば、表示モードをGameにすると、「Smart Insight機能」の設定で「RTS」(リアルタイムストラテジー)や「FPS」(ファーストパーソンシューティング)など各ゲームジャンルに最適化された設定を選ぶことができる。この設定にすることにより、実質、どんなゲームも非常に見やすく有利に展開させることがデキちゃうのだ。
ってFS2333、モニターというハードウェアによりゲームに勝てる可能性が高まるなんて、ちょっとズルい? ともあれ、映像に関する「見えにくさ」を自動で解消してくれるこれらの機能、ホントに新次元だと思う。
実際に使っていると、そのほかいろいろな部分でも満足度が非常に高いFS2333である。
たとえば新しくなったスタンド。コレがちょいとイイ。新スタンドは上下60mmの昇降が可能になり、さらに左右172°の範囲でスウィーベル可能になった。チルト角度は0〜25°の範囲となった。また、背面上部にハンドルが装備され、本体を片手でヒョイと持ち上げられるようにもなった。
リモコンも一新された。新型リモコンはボタンがラバー式で立体感のあるものになり、非常に操作しやすくなった。また、「Smart Resolution機能」や「Smart Insight機能」のオンオフや調節を即行える「Smart Functionダイレクトキー」を搭載。リモコン片手にササッとSmart機能の設定を変更できて非常に便利だ。
新スタンドの搭載により、上下60mmの昇降、左右172°のスウィーベル、0°〜25°のチルトが可能となった |
本体背面上部に装備されたハンドルで、簡単に持ち上げられるようになった | ボタンがラバー式で立体的になり、 操作しやすくなった新型リモコン |
薄いパネルに額縁も狭く、全体的にスリムで好感触なデザイン |
モニターとして全体的にスリムなのも好感触。従来機種でもそうだったが、FS2333はバックライトにLEDを採用したことなどにより、まずはパネル自体が非常に薄く、額縁部分も狭い。前述の、可動範囲の広いスタンド部分もその機能のわりには薄手でシンプル。画面の位置を非常に低く設定できることもあって、モニターとして過剰な存在感や違和感がない。ので、非常に多くのシチュエーションでムリをせず設置できると思う。
てな感じで、ますます完成度が高くなったホームユース・エンターテインメント向けモデルことFORIS FS2333。この充実度で実売価格3万円台。メーカー5年間保証も付いている。コストパフォーマンスと画質を両取りして万全の満足度を得たいなら、絶対にチェックしてほしい一台だ。
スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称 衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。 |
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