前回は春モデルのF-01Fについて、iPhoneと比較するレビューをお届けした。ARROWSシリーズの記事なのにiPhoneの話が半分の原稿もどうよ、と思ったが、何も言われなかったので、今度は冬モデルの「ARROWS NX F-02G」をiPhoneと比較してみることにした。
今回もiPhoneユーザーとしての視点から、iPhoneとF-02Gを比べつつ、F-02Gについてのレビューをお届けしたい。
持ちやすさと見やすさのバランスは? ディスプレイ&本体サイズ
サイズ
スマホのサイズ、とくにディスプレイのサイズは使い勝手に大きく影響を及ぼす要素だ。しかし、どのくらいのサイズが使いやすいかは、手の大きさや利用スタイルによって人さまざまである。大きければいいとも小さい方がいいとも言い切れず、大きさごとにメリット・デメリットがある。
iPhone 5や5sは、4インチというコンパクトなディスプレイを搭載していた。このくらいのサイズだと片手で使うとき、ディスプレイの端まで指が届きやすく、本体もしっかり握れたが、ご存じの通り、iPhone 6/6 Plusは4.7インチ/5.6インチと、大幅に大型化した。
4.7インチのiPhone 6も、片手で操作することは可能だ。だがiPhone 5sほどしっかりと握るのは難しく、片手操作時は手のひらに載せる感じになるので、iPhone 5sほど安定しない。5.5インチのiPhone 6 Plusになると、片手で操作することはかなり難しくなってくる。電車の吊革につかまりながら、といった利用シーンには不向きなサイズだ。ただ、両手で使う分にはむしろこのくらいの大きさの方が操作しやすかったりする。とくにQWERTYキーボードを両手で使うなら、このくらいの大きさの方が使いやすいと思う。
これらのiPhoneに対し、5.2インチのF-02Gは、スペック上のサイズはiPhone 6 Plusに近いように見えるが、実際に手にして使ってみると、意外なことにiPhone 6に近い印象を受ける。iPhone 6同様、しっかり握ることはできないが、片手で難なく操作できる感じだ。
その理由のひとつは、Android特有のソフトウェア表示キーだ。F-02Gでは画面の最下段にホームボタンやバックボタンが表示されるので、画面外にホームボタンはない。ホームボタンを含めた「親指を動かす範囲」で言うと、iPhone 6とF-02Gは大差がないのだ。幅が若干長くなるので、さすがに完全に同じとは言えないが、iPhone 6 Plusほど片手操作が困難になったりはしない。
どのサイズのスマホが合っているかは、人それぞれで、どの大きさがベストかは、一概には断言できない。両手で操作することが多いなら、ディスプレイが大きい方が表示できる情報量が増えて便利だが、片手操作にこだわるならば、手に合った大きさでないとかなり使いにくくなってしまう。自分の利用スタイルや手の大きさを考え、できれば店頭の実機で大きさを確かめてからスマホを選ぶようにしよう。
解像度
ディスプレイの解像度で見ると、iPhoneシリーズはAndroidスマホに比べると、解像度が低い傾向がある。iPhone 6/6 Plusで解像度が若干増えたが、iPhone 6でも1334×750ドット、iPhone 6 Plusでも1920×1080ドットである。5インチ以下でも1920×1080ドットが当たり前のAndroidスマホに比べると、とくにiPhone 6はスペック面で見劣りしてしまう。
一方のF-02Gは5.2インチで2560×1440ドットという、とくに高解像度なディスプレイを搭載している。Androidスマホで主流の1920×1080ドットの約1.8倍の解像度だ。
正直に言えば、ここまでの高解像度になると、日常の使用ではなかなか違いは実感しにくい。たとえばフルHDとWQHDくらいだと、ぱっと見ただけではほとんど見分けがつかない。しかし実感しにくくても、細部の表示は確実に向上し、見やすくなっている。たとえば文字であれば輪郭が綺麗になっていて読みやすい、そんなイメージだ。
2560×1440ドットという解像度は、Nexus 6など最新世代のAndroid端末が一部、搭載しつつあり、次世代の標準になりつつある。現時点では、2560×1440ドットに対応したコンテンツはそれほど多くないが、将来的には配信コンテンツの多くが2560×1440ドットに対応してくると予想されるので、そういった高解像度コンテンツに備えるという意味でも、F-02Gのスペックは頼もしいと言える。
手軽さとプライバシーを両立! 指紋認証&セキュリティ
指紋認証
iPhone 5s/6/6 PlusとF-02Gはともに指紋認証センサーを搭載しており、ロック解除等を気軽に行なうことができる。指紋認証に慣れてしまうと、指紋認証センサーなしのスマホを使うのが非常に面倒に感じられるようになる。ロック解除のワンステップだけだが、わたしのようにエレベーターの中や信号待ちといった短時間でもスマホを使ってしまう中毒気味のユーザーにとって、このワンステップの違いは大きい。
もちろんヘビーユーザー以外にとっても、ロック解除時の手間が省けるので、この指紋認証機能は大いに意味がある。パスコードやパターンの入力が面倒でスマホを使う機会が減る、なんていう心配がない。初心者からヘビーユーザーまで、スマホを使いこなしたい人には絶対に使って欲しい機能だ。
iPhone 5s/6/6Plusの指紋認証センサーは、ホームボタンに内蔵された「Touch ID」。たとえばスリープを解除するときは、ホームボタンを押して画面を点灯させ、そのまま指をホームボタンの上に置いておくだけで、指紋が読み取られ、セキュリティロックを解除できる。パスコード入力どころかセキュリティ設定なしの画面ロック解除より簡単だ。画面を見る必要もない。
F-02Gの指紋認証センサーは本体背面に搭載されている。iPhoneが指紋認証センサーを搭載したのは昨年のiPhone 5sからだが、富士通のARROWSシリーズはもっと前から指紋認証センサーを採用している。歴史が長いだけに、ARROWSシリーズの指紋認証センサーの完成度は高い。iPhone同様、センサーはボタンにもなっていて、たとえばスリープ状態からボタンを押してスリープを解除し、そのまま指をスライドさせて指紋を読み取り、ロック解除できる。センサーの位置はなかなか絶妙で、左右どちらの手で握っていても、無理なく人差し指の指紋を読み取れる。
F-02Gの指紋認証センサーはプッシュ→スライドの2ステップが必要なので、スライド不要なTouch IDに比べるとちょっとだけ手間がかかるが、精度は高いので、iPhoneのTouch ID同様に画面を見ずにロック解除ができる。パスコードやパターンの入力とは比べものにならない簡単さだ。
プライバシー設定
また、F-02Gの場合は、搭載された「プライバシーモード」との相性が良いのもポイント。プライバシーモード中は、プライバシー指定した連絡先やブックマーク、アプリ、写真などが表示されなくなり、指定連絡先からの通知や指定アプリの新着通知もなくなる。さらにプライバシーモードに連動して予測変換のオン/オフを切り替えたり、プライバシーモード中も知らない人にはわからないような形で通知を出すなど、細かいポイントもしっかり抑えてある。スマホ以前の時代から、富士通製のケータイはプライバシー保護やセキュリティー機能が充実しており、このあたりも一日の長がある。
速さ、エリアなどに大きな差? 通信/通話機能
対応するネットワーク
LTEの通信面では、グローバルモデルのiPhoneより、国内キャリア仕様のF-02Gの方がドコモのネットワークへの最適化が進んでいる。iPhone 6/6 Plusは世界各国の多様な周波数帯域をカバーしているが、日本のドコモしか使っていない1500MHz帯(バンド21)はサポートしていない。しかしドコモのネットワークのために作られたF-02Gは、バンド21を含むドコモが利用するすべての周波数帯域に対応している。これにより、使えるエリアや混雑時の通信速度の面で有利になっている。
ちなみにF-02GとiPhone 6/6 Plusはともに、LTEの700MHz帯(バンド28)にも対応している。ドコモの冬モデルだと、ここをサポートする機種は少ない。この周波数帯域は、海外ではよく使われているバンドなので、ローミング時にも有利なのだが、ドコモも2015年早々に運用開始予定なので、ここに対応しているのは地味に嬉しいポイントだったりする。
その他、差が付く機能
また、iPhoneは「Multipath TCP(MPTCP)」という機能をサポートしている。これはWi-Fi経由とモバイルデータ通信経由の両方の通信経路を同時に確保しておいて、Wi-Fiが応答しなくなったとき、速やかにモバイルデータ通信を使うという機能だ。公衆無線LANなど、混雑などでWi-Fi側のインターネット応答が悪化したときに役に立ってくれる。
F-02Gにも、これに似た、Wi-Fiとモバイルデータ通信の両方で同時に通信する「マルチコネクション」機能が搭載されている。それに加え、サーバーとの接続を複数に分割し、ダウンロード速度を向上させる「高速ダウンロード」機能にも対応しているので、その2つを併用することで通信速度を大きく向上することが可能だ。
通話機能に関しても、ちょっとした差がある。細かいポイントだが、不在着信時にメッセージを録音する留守番電話機能(伝言メモ機能)を内蔵しているというのも、日本のケータイ・スマホならではの特徴で、F-02Gにも当然、搭載されている。一方でiPhoneはメッセージを録音する機能はなく、留守番電話サービスを使う必要がある。「ビジュアルボイスメール」というiPhoneに最適化されたサービスを利用できるが、サービス利用料金(月額300円)がかかってしまう。
また、iPhone 6/6 PlusではiPhoneシリーズとしては初めて、非接触通信、いわゆるNFCに対応したが、その用途は北米における決済サービス「Apple Pay」だけに限られている。それに対してF-02GのNFCとFeliCaは、モバイルSuicaやiDといった様々な決済サービスに対応し、Bluetooth機器のペアリングなどにも利用できる。この部分は、iPhoneユーザーからするとうらやましく感じられるポイントだ。
水回りでも安心! 防水機能
日本では当たり前ともいえる防水仕様だが、海外では一部のモデルにしか搭載されておらず、もちろんiPhoneも防水仕様ではない。スマホの防水が絶対に必要なシーンというのは少ないかも知れないが、しかし「手が濡れている」「傘を差すほどじゃないけど雨がパラついている」みたいなシーンでも、なんの気兼ねなく使えるというのは、非常に大きなポイントだ。
F-02Gは防水に加え防塵機能もあるので、アウトドアで心配することなく利用できる。
作り込みがモノを言う? 日本語入力
日本語入力の面では、F-02Gのほうが優位だ。iPhoneでは、iOS 8からようやくOS標準以外の日本語入力アプリが使えるようになったが、外付けキーボードでは利用できないなど、制約は多い。iOS向けのATOKも提供されているが、現時点ではiOSの制約により、使い勝手や機能面ではAndroid向けATOKには及んでいない。
一方、F-02GにはATOKをARROWS専用にカスタマイズした「Super ATOK ULTIAS」が標準搭載される。ただでさえ高機能なATOKがARROWSのハードウェア/ソフトウェア向けにカスタマイズされているので、タッチパネルのチューニングやプライバシーモード連動など、完成度が非常に高いのが特徴だ。本来ならば有償のATOKを無料で利用できるというのも嬉しいポイントだ。
2日、3日はもう当たり前? バッテリー駆動時間
どんなスマホを使っていても、バッテリーの持ちはもっとも気になるポイントだ。iPhoneは内蔵バッテリーの容量を公表せず、他社のスマホと共通の指標を公開していないので、あくまで感覚的なものになってしまうが、iPhoneのバッテリーの持ちは決して良いものとは言えない。
たとえばiPhone 6の場合、普通に使っている分にはけっこう省電力なのだが、コンパクトな分バッテリーサイズが小さいようで、通信や処理の負荷が大きなアプリを使うと、短時間で数%のバッテリーを消費している、なんていうこともある。そのため、iPhoneを外出先で長時間ヘビーに利用するときは、筆者は必ずモバイルバッテリーを持ち歩いている。そうしているiPhoneユーザーは多いはずだ。
一方のARROWSをはじめとする国内向けスマホは、グローバル仕様のスマホに比べると、バッテリーの持ちが良い傾向がある。
実際のバッテリーの持ちは、内蔵バッテリーの容量だけではわからない。ディスプレイの種類によって電力消費は大きく変わるし、データ通信やアプリ動作などもソフトウェアのチューニングによって電力消費を抑えることができる。そこでドコモは「1日あたり85分間、Web閲覧や動画再生をする」と想定したときの「実使用時間」というスペックを公開している。
この実使用時間を見ると、富士通のスマホはバッテリーの持ちが良い傾向があり、昨年モデルで実使用時間は3日(72時間)を上回っていた。そして最新のF-02Gの実使用時間は、82.4時間となっている。液晶は大きて解像度が高いほど電力効率が落ちる傾向があり、そういった意味では5.2インチで2560×1440ドットの液晶を搭載するF-02Gは非常に不利なのだが、それでもこれだけのバッテリーの持ちを実現できているのは、さすが富士通といったところだろう。また、「非常用節電モード」は最低限必要な機能以外をオフにすることで、バッテリーを最大限長持ちさせることができる。
大容量バッテリーだと充電時間も気になるが、F-02Gはドコモの「急速充電2」という機能に対応している。通常のUSBの電圧は5Vだが、充電器とスマホの両方が急速充電2に対応しているとき、9Vで充電するようになっている。これにより、3500mAhという大容量の内蔵バッテリーを搭載しているにもかかわらず、ほんの1時間程度で、約50%を充電可能となっている。夜に充電するのを忘れてしまっても、朝、身支度を調えているあいだにかなりの分量を充電できるので、これもバッテリー切れを防ぐ重要な機能だ。
テレビや録画番組視聴は? エンタメ機能
テレビ機能に関しては、やはり日本のテレビ規格に対応したF-02Gが強い。F-02Gはテレビアンテナを内蔵し、ワンセグだけでなく、フルセグにも標準対応している。iPhoneも外付けのチューナーなどを利用すればテレビ視聴が可能だが、やはり一手間はかかる。
また、最近ではHDDレコーダーなどに録画したテレビ番組をスマートフォンで視聴することができる。DTCP-IPやDTCP+といった国内のAV機器特有の著作権保護方式に対応するアプリを使えばF-02GもiPhoneも同様に視聴が可能だ(F-02Gはアプリ標準搭載、iPhoneはApp Storeでの購入が必要)。
搭載OSはどっちが魅力?
iPhoneのOS「iOS」と、F-02GのOS「Android」。スマートフォンを選ぶ際の一番のポイントであるアプリの充実度は、現在ほとんど差がなくなってきている。
Androidのアプリ配信ストアであるGoogle PlayもiPhoneのApp Storeも、配信されているアプリの充実度合いには大きな差はなく、たいていの定番アプリは、どちらでもダウンロードできる。以前はApp Storeで先に配信されるアプリも多かったが、最近はほぼ同時にリリースされるアプリがほとんどだ。
一方でGoogle Playはアプリの自由度が高く、システム関連のアプリなども配信されている。中・上級者向けではあるが、ホーム画面など使い勝手をカスタマイズできるのはAndroidならではの魅力と言えるだろう。
実は似ているアップルと富士通?
富士通のケータイ・スマホというと、「全部入りのハイスペック」というイメージが強く、アップルとは性格が全然違うと思われがちだが、実は共通しているところも多い。
たとえばiPhone 5sで指紋認証センサーとモーションコプロセッサが導入されたが、それらは富士通のケータイではすでに導入されていた機能でもある。逆に富士通のARROWSシリーズは、カメラアプリなどのUIをiPhoneのようにシンプルにする方向に進んでいたりする。両社、iOSとAndroidという異なるプラットフォーム上でユーザーエクスペリエンスを追求した結果、似たアプローチになった面があるのだ。
富士通のケータイ・スマホというと、らくらくホンや法人端末など、「堅実」というイメージもある。この「堅実」さは、ARROWSシリーズのユーザーエクスペリエンス改善でも発揮されていて、F-02Gは海外のスマホにはない様々な機能を持ちながら、使い勝手の良いモデルとなっている。
スマートフォンを買うならiPhone、という人でも、F-02Gは是非とも触っておきたいモデルだ。