「らくらくスマートフォンにしてよかったですか?」
と聞くと
「そんなのもちろんよねぇ! あははははは!」
と笑いながら即答された。
筆者はその日、実家での取材という珍しい仕事をしていた。話を聞いたのは私の実の母(72)と、母の友達のKさん(68)のおふたり。どちらも「らくらくスマートフォン」ユーザーである。
世間はスマートフォン全盛。シニアも当然、まわりの人がスマホをいじっていると興味がわくが、スマートフォンに興味を示しても、シニアの周りの人々は「どうせ使えるわけない」という先入観から、スマホをあきらめさせるケースもあると聞く。使い方などをあれこれ聞かれるのも面倒なので、というわけだ。
それを聞いて気がついた。少し前、70歳を過ぎた母が突然「スマートフォンにしたい」と言い出して、自分で「らくらくスマートフォン」に機種変更して以来、筆者は使い方などについて、母からほとんど質問を受けてはいない。父をはじめとして、母の周りにはスマホを使っている人がほとんどいないにも関わらず、である。
母はどのように「らくらくスマートフォン」を使っているのか。話を聞きたいと申し出たところ、たまたま同じ端末を使っている友達がいるということで、一緒にお話を伺えることになった。
そんなわけで、今回は地方に住むあるシニアの「らくらくスマートフォン」利用例をご紹介する。家族で導入を検討されている方の参考になれば幸いである。
新しいものに好奇心
母のご友人、Kさんはフィーチャーフォンを使い始めて10年。彼女にとって初のスマホとなる「らくらくスマートフォン」は歴代3台目の端末で、前機種は「らくらくホン」。母は「らくらくスマートフォン」が5台目の端末だという。
なぜスマートフォンにしようと思ったのか、と聞くと、2人とも「スマートフォンを使ってみたかったから!」とストレートだ。
Kさんはインターネットやゲームをしてみたかったそうだ。母はそれまで使っていたフィーチャーフォンのカメラに不満があり、スマートフォンにしたらとても良くなるのではないか、と期待しての機種変更だったという。
二人が「らくらくスマートフォン」に機種変更したいと言ったとき、周りにスマートフォンを使っている家族はいなかったという。しかし意外にも反対はなく、当人の意志で前に進んでいくことになった。
「うちは何も言われなかったわ。迷惑かけなければね! その頃は娘もまだスマートフォンを使ってなくてね。メールで『スマホデビューじゃん!』と言われたわ」(Kさん)
それぞれの使い方
「らくらくスマートフォン」に機種変更してから約1年、二人とも、電話、メール、カメラなどを中心にスマートフォンを堪能しているそうだ。
Kさんは念願のインターネットを体験。特にキーワード検索がお気に入りで、「使ったことがない食材をもらったりしたときに、検索するといいのよ。それができるのはよかったわ」と喜ぶ。行ってみたい場所の地名を入れて、地図や見所を探したりもするという。
誰に聞くともなくキーワード検索のコツも覚えたようで、「細かく入れないとダメよね」と、複数の単語で検索結果を絞り込むテクニックもご存じだ。それまでの情報収集はご主人に頼るしかなかったが、今では疑問がわいたらすぐに自分で調べてしまうそうである。
私の母はというと、インターネットの利用にはかなり抵抗があるらしい。「変なところに飛ばされたら怖いから、私はインターネットは使わない。その代わり辞書がお気に入り」という。テレビを見ているときに生じた疑問は、「らくらくスマートフォン」の「便利ツール」の中に用意されている「広辞苑」で調べて解決しているそうだ。細かい情報はカバーできないが、確実に答えが1つ返ってくるところもいいのだろう。
このほかに人気だったのは、歩数計や電卓、目覚まし時計など。目覚まし時計は、薬の服用時間のリマインダーとして活用されていた。母は遠方に住む妹と「LINE」も使っている。「らくらくスマートフォン」や「らくらくスマートフォン2」はGoogle Playをサポートしていないが(「らくらくスマートフォンプレミアム」はGoogle Playもサポート)、今はドコモの公式メニューからLINEをインストールできるようになったので、妹が帰省した際にインストールしてもらったそうだ。スタンプで簡単にやりとりを表現できるところが気に入っており、Kさんにも紹介していた。
ちなみに、同じ「らくらくスマートフォン」を使う2人だが、インターフェイスが微妙に違うことに気付いた。母は標準のホーム画面をそのまま使い、Kさんは「らくらくホン」のUIを受け継いだ「シンプルメニュー」に切り替えていた。「今まで使ったことがなかったものを使うより、らくらくホンで使っていたものが安心できるから」ということらしい。どちらもスマートフォンとの自分流の付き合い方が確立されているところが面白い。
分からないときは、とにかく"押す"!
スマートフォンを使っていれば、誰でも何かしらの疑問に直面する。近くに詳しい人がいないのにどうやって疑問を解決しているのだろうか、と思ったが、2人の答えはいたってシンプル。
「とにかく(キーを)押してみる」!
である。操作の選択肢が多くなるスマートフォンの場合、怖がって触れなくなるのでは、と思っていたが全く逆。すぐに覚えられなくても、とにかくいろんなところを触って、そのうちに覚えるのだとか。「あちこち触っていても、特におかしなことになったことはない」(母)というのが安心要素になっているのだろう。「らくらくスマートフォン」はホームボタンを押せばとにかく最初のホーム画面に戻れるので、そのあたりも安心感があるのかもしれない。
購入時に受け取った専用のガイドブックも活用しているようで、Kさんが「メニュー切替」の方法を知ったのも専用のガイドブックから。
話を聞いている最中、メール入力周りのトラブルについて2人が情報交換を始めた。自分のほうではどうだ、と画面を見せ合いながら話し合う様子は新鮮だった。
操作については、無料で何度でも電話で質問できるサポートセンター「らくらくホンセンター」がメニューにあるが、まだお世話になったことはないという。操作でよくわからないところにあたっても"そういうもんなのかな"くらいのユルさで、おおらかに許容するようだ。
「らくらくスマートフォン」なら案外なんとかなる!
話している最中も2人の進化は止まらない。ワンセグが見られるようになったり、「しゃべってコンシェル」を使い始めてみたり、ゲームアプリを始めてみたりととにかく好奇心旺盛で、ワイワイ言いながら楽しそうなのが印象的だった。
購入から1年経ってもまだスマートフォンを「楽しんでいる」というのは面白い。フィーチャーフォンのときはそんなことはなかったからだ。新しいことを取り入れられるのがうれしいのはもちろんだが、わからないことがあっても、それがいい刺激になっているようだ。顔のシワは確実に増えているが、自信がついたのか、以前よりハツラツとした印象すらある。
「どうせ使えないんだから、スマホなんてやめたほうがいい」と思う人がいるかもしれないが、わからなくても案外なんとかなる、というのが今回の感想だ。それはとりもなおさず、はじめてスマホを触る人のために使いやすく作られた「らくらくスマートフォン」のおかげ、と言っても過言ではないだろう。
シニア層から「スマートフォンを使ってみたい」と言われたら、先入観だけでつっぱねるのではなく、「らくらくスマートフォン」を触ってもらうところから始めてみてはいかがだろうか。そしてもし、触ってみてスマートフォンを「使えるようになりたい」と思えれば、そこからは周りが思う以上の情熱で疑問を解決し、自力で使いこなしてしまうかもしれない。
(すずまり)