auの最強のネットワークを活かす
今年、国内の携帯電話サービスはひとつの転換期を迎えつつある。
たとえば、auは2012年9月から「au 4G LTE」というネーミングで、LTEによるサービスの提供を開始し、すでに実人口カバー率99%を達成しているが、このLTE方式の後継規格である「LTE-Advanced」を構成する技術のひとつである「キャリア・アグリゲーション」をいち早く取り込み、受信時最大150Mbpsという高速通信サービスをスタートさせている。これに加え、UQコミュニケーションズが昨年からサービス提供を開始した高速データ通信サービス「WiMAX 2+」へ対応し、対応スマートフォンでは受信時最大110Mbpsの高速データ通信が利用できる環境を整えている。これまでauではWiMAX対応、4G LTE対応と、スマートフォンの高速通信環境を充実させてきたが、いよいよ今年からは次世代技術を活かしたサービスの提供が開始され、これらに対応したスマートフォンが主流となるわけだ。
今回、auから発売されたシャープ製スマートフォン「AQUOS SERIE SHL25(以下、SHL25)」は、まさにこうした新しい時代にふさわしいデザインと機能を兼ね備えた期待のフラッグシップモデルだ。
AQUOS SERIE SHL25。余分なものをそぎ落とされたシンプルなデザインが大画面を際立たせる
背面もシンプル&フラット
シャープは各社向けのスマートフォンやタブレットにおいて、国内でいち早くAndroidプラットフォームを手がけたノウハウを活かす一方、自らの強みである液晶パネルで省電力性能に優れたIGZO液晶ディスプレイを採用したモデルをリリースしてきたが、昨年新たに、大画面の液晶パネルを搭載しながら、本体の上と左右の額縁を極限まで狭く仕上げた『EDGEST(エッジスト)』デザインを採用したモデルを開発し、各方面から高い評価を得ている。au向けには2014年春モデルで、コンパクトなスマートフォン「AQUOS SERIE mini SHL24」、7インチディスプレイ搭載タブレット「AQUOS PAD SHT22」を供給し、好調な売れ行きを記録したが、今回のSHL25は、いよいよau向けのメインストリームのスマートフォンでEDGESTデザインを活かしたモデルが登場することになる。もちろん、auの新しい高速データ通信サービスである「キャリアアグリゲーション」「WiMAX 2+」にも対応しており、最強のネットワークを最大限に活かせるモデルとして仕上げられている。多彩なコンテンツを高速にダウンロードしつつ、迫力の大画面ディスプレイで楽しめるスマートフォンというわけだ。
ところで、すでに報じられていてご存知の人も多いだろうが、シャープは今夏から各社向けのスマートフォンのシリーズ名を一新している。これまでスマートフォンのブランドネームとして「AQUOS PHONE」を使い、これに各事業者向けの「SERIE」「ZETA」「Xx」という愛称を組み合わせていたが、今年の夏モデルから液晶テレビでおなじみの「AQUOS」に統一し、そこに各社向けの愛称を組み合わせている。
画面占有率80%の大迫力
三辺狭額縁によるEDGESTデザインが特徴的なSHL25だが、もっとも注目されるディスプレイ周りの仕様を見てみよう。
ディスプレイは約5.2インチのIGZO液晶ディスプレイを採用しており、EDGESTデザインを採用した他のモデル同様、実際に手に持ってみると、「画面そのものを持っている」ような印象を受ける。5インチオーバーのディスプレイとなると、ユーザーとしては持ちやすさが気になるが、2013年冬モデルで高い人気を得たAQUOS PHONE SERIE SHL23(以下、SHL23)と比較すると、EDGESTデザインでコンパクトに仕上げられていることがよくわかる。
SHL23は約4.8インチのディスプレイを搭載し、画面占有率が約68%、ボディ幅が約70mm、高さが約140mmというスペックであるのに対し、SHL25は画面占有率が約80%、ボディ幅が約71mm、高さが約134mmにまとめられている。画面をふた周り以上大きくしながら、ボディ幅はわずか1mmしか差がなく、高さにいたっては約6mmも短くなっており、片手でもラクに持てるサイズに仕上げられているわけだ。大画面のスマートフォンが欲しいが、サイズが気になると考えていた人にとっては、魅力的なポイントだろう。
約5.2インチの大画面とは思えないボディの小ささ
ちなみに、大画面化を実現しながらボディ面積を狭くしたということで、バッテリー容量が気になるかもしれないが、本体内蔵のバッテリーはSHL23の3000mAhに対し、3150mAhという大容量を搭載している。省電力性能に優れたIGZO液晶ディスプレイとも相まって、auスマートフォンのラインアップでも最高レベルのロングライフを実現しているが、省電力機能「エコ技」を併用することでさらに長持ち利用が可能。電池残量が少なくなったときも、auが今回の夏モデルから採用している「QuickCharge 2.0」による急速充電に対応しているため、朝、外出前のちょっとした空き時間にすぐに充電することができる。
microUSB端子からの急速充電に対応。防水に対応しながらもキャップレスなのがうれしい
SHL25は迫力ある大画面を持ちやすいサイズ感にまとめているが、液晶ディスプレイも一段と進化を遂げている。
前述のようにここ数年、シャープはIGZO液晶ディスプレイを採用したスマートフォンやタブレットを次々と開発し、各社のラインアップに供給し、他社製品を圧倒する優れた省電力性能で高い評価を得てきている。IGZO液晶ディスプレイは「インジウム(In)」「ガリウム(Ga)」「亜鉛(Zn)」「酸素(O)」によって構成される酸化化合物を液晶パネルの薄膜トランジスタや配線に使うことで、高精細かつ高い省電力性能を実現したものだ。従来のアモルファスシリコン液晶が毎秒60回の表示書き換え動作で電力を消費していたのに対し、IGZO液晶ディスプレイは静止画で毎秒1回、動画も30fpsのコンテンツであれば、従来の半分の書き換え動作になるため、静止画表示でも動画再生でも高い省電力性能を発揮することができる。
そして、今年の夏モデルに採用されたIGZO液晶ディスプレイでは、「PureLED(ピュアレッド)」と呼ばれる新開発のバックライトに加え、高透過率のカラーフィルタ、最適な色調整を可能にする映像処理エンジン「FEEL artist」の組み合わせにより、さらに色鮮やかな色彩表現を可能にしている。特に、PureLEDは赤色系の発色がグッと良くなり、人物などの肌色も自然な色合いで再現できている。カメラで撮影したスナップ写真はもちろん、auのビデオパスなどのコンテンツサービスでダウンロードした映像なども美しいディスプレイで存分に楽しむことができるわけだ。
画面占有率が高いEDGESTデザイン。IGZO液晶ディスプレイの発色も良くなり、画面が迫ってくるような迫力だ
進化を遂げたグリップマジック
約5.2インチという大画面をコンパクトなボディで実現したSHL25だが、EDGESTデザインによる三辺狭額縁だけでなく、使い勝手の面でも工夫されている。
たとえば、昨年の冬モデルであるSHL23で採用され、新しい使い勝手として注目された「グリップマジック」も大きく進化を遂げている。グリップマジックは本体下部の左右側面にグリップセンサーを内蔵することにより、ユーザーがスマートフォンを「手に持った」ことを検出し、自動的に画面をONにしたり、机に置いたときは「手から放した」(もしくは手から離れた)ことを検出し、自動的に画面をOFFにしたりと、省電力に貢献することができる機能だ。手に持ったときに表示される画面はロック画面や時計表示が選べるうえ、ユーザーがスマートフォンを持ったままであることを検出し、画面を消灯しない「Bright Keep」も利用できる。
スマートフォンのセンサー部分に触れたり、握ったりするだけで画面がONに。持っているあいだは画面がOFFにならない「Bright Keep」も
そして今回のSHL25では、これらに加え、グリップマジックをさらに活かした機能が追加されている。たとえば、「バイブでお知らせ」ではスマートフォンがポケットやカバンなどから取り出せないとき、本体を握るだけで着信や未読メールの有無をバイブで確認できる。「
また、ユーザーがスマートフォンを「持つ」という点に着目した機能として、新たにワンハンドアシストが搭載された。前述のように、SHL25は約5.2インチという大画面の液晶ディスプレイを搭載しながら、ボディ幅を約71mmに抑え、持ちやすくしている。しかし、それでも手の大きさや指の長さによっては、片手で操作するとき、画面の反対側に指が届かないといったことが起こり得る。そこで、SHL25では画面下部のホームキーの位置から斜め方向にドラッグすると、画面サイズをふた周りほど縮小表示できるようにしている。もう一度、同じ操作をすれば、元のサイズに戻すことができる。縮小表示されたサイズは約4インチクラスのスマートフォンとほぼ同じサイズなので、片手でも十分に操作ができる。
簡単な操作で画面を縮小表示できるので、片手操作も楽々
これに加え、アプリ履歴キーをタップしたときに表示されるクイックランチャーで、アプリを切り替えられるだけでなく、お気に入りのアプリを登録しておき、これも片手操作のときにすぐにアプリを起動できるようにカスタマイズできる。
もっと写真が楽しくなるカメラ
スマートフォンの楽しみ方にはいろいろなものがあるが、やはり、多く使うようになってきたのがカメラ機能だ。ケータイ時代は撮った写真を保存するだけでなく、友だちや家族に送信したり、待受画面に設定するといった使い方をしていたが、スマートフォンではこれらに加え、FacebookやTwitterといったSNSに投稿することが増えている。SNSで「ウケのいい」写真を撮るため、カメラアプリを活用するユーザーも多いが、やはり、写真の基本はいかにキレイに、いかに見栄えのいい写真を撮ることができるかがスタート地点。ブレた写真や真っ暗な写真では、どんなにカメラアプリで加工してみても何が写っているのかがわからないからだ。
今回のSHL25には裏面照射型CMOSイメージセンサーによる1310万画素カメラが搭載されており、従来モデルに引き続き、F値1.9という明るいレンズや画像処理エンジンが組み合わせられているが、今回は画像処理エンジンが「Night Catch II」にバージョンアップして、暗いところでも人物や背景を明るく撮影することが可能だ。
引き続きF値1.9という「明るい」レンズを搭載
これからの季節、外出先や旅先などで、夜景をバックにスナップを撮ることがあるが、こうしたシチュエーションで多いのが、バックの夜景はキレイなのに人物が真っ暗といった写真。しかし、Night Catch IIでは人物はフラッシュをONにして撮影し、背景は複数枚をフラッシュOFFで撮影して、画像を明るく合成することができる。ちなみに、本体背面のカメラ部の下に備えられたフラッシュは、輝度が高く、自然な色調のLEDを採用し、人物なども自然な色合いで美しく撮影することが可能だ。
夜のシーンを明るく撮れるNight Catchがさらに進化。複数枚の合成で、人物と背景、両方明るく撮れるようになった
また、従来モデルから明暗差の多いシーンに強い「HDR(High Dynamic Range)」による撮影機能が搭載されてきたが、2回の撮影を合成して画像を生成していたため、合成に時間がかかったり、合成ズレが起きてしまうことがあった。SHL25に搭載された「リアルタイムHDR」では、一回のシャッターでHDRによる撮影を可能にしたため、すぐに画像が生成され、合成ブレの心配もなくなっている。また、HDRがONの状態での連写もできるようになった。
画面全体が明るく撮れるHDR撮影。さらに、リアルタイムHDR搭載で、HDR撮影の「合成ミス」が軽減される
こうした撮影機能が充実したことで、SHL25では誰でも手軽にキレイな写真を撮れるようにしているが、それだけではSNSで十分な「いいね!」がもらえないかもしれない。そこで、新たに搭載されたのが「フレーミングアドバイザー」という機能だ。これは、撮影シーンに合わせて画面上にガイドやメッセージによるアドバイスが表示される機能で、食べ物の写真を撮るときは丸いお皿のガイドなどが表示される。プロの写真家をはじめ、写真が趣味といった人たちの撮った写真を見ていると、同じモノを撮っているはずなのに、どうも写真を見た印象が違うといった経験はないだろうか。専門的な知識やノウハウを持っていれば、雰囲気のある写真を撮れるわけだが、フレーミングアドバイザーはそのノウハウのひとつである「構図」に着目し、カメラを起動したときにガイドを表示しているわけだ。フレーミングアドバイザーを活かして撮影すれば、いつもより、ちょっと「いいね!」の数が多くなるかもしれない。
被写体に応じて、最適な構図(フレーミング)を教えてくれる
そして、今回のSHL25のカメラ機能で、もっとも楽しめそうなのが「全天球撮影(Photo Sphere)」だ。最近のスマートフォンのカメラ機能にはパノラマ撮影の機能が搭載されているが、パノラマ撮影は基本的に左右に広い景色などを撮るのに適している。これに対し、全天球撮影は連続的に自分の周りを撮影することで、360度のパノラマ写真を生成することができるのだ。撮影した写真は端末内で再生できるほか、GmailやGoogle+で共有することが可能だ。端末での再生については、ちょうどGoogleストリートビューを表示しているときと同じような感覚で、画面をフリックしたり、ドラッグして動かせるだけでなく、コンパスモードをONに切り替えれば、端末の動きに合わせて、表示する場所を動かすことも可能だ。旅先の観光スポットの様子を友だちや家族に伝えたりするときも便利だが、特定のロケーションの様子を伝えるビジネスなどにも役立ちそうだ。
上下左右360度、空間を「埋める」ように写真を撮って全天球パノラマ写真が作成できる
さらに、カメラを単純に撮るだけでなく、撮って何かに活かす機能として、「翻訳ファインダー」や「検索ファインダー」が搭載されている。「翻訳ファインダー」は他事業者向けの端末にも搭載されたことがあるが、カメラを起動し、ファインダー内に映し出された文字列の英語などを日本語に翻訳して、リアルタイムで元画像に重ねる形で表示できるものだ。検索ファインダーは同様のしくみを検索エンジンと組み合わせたもので、ファインダー内に表示されている文字列を指でなぞることにより、その言葉に関連する情報や画像を検索し、表示してくれるというものだ。
かざすだけで日本語に翻訳できる「翻訳ファインダー」など、狭額縁を意識したAR風カメラアプリを多数搭載
この他にもメーカーサイト「SHSHOW(エスエイチショウ)」からカメラに機能を追加できる「+カメラ活用アプリ」では、定番ナビゲーションアプリの「NAVITIME」と連携し、最寄り駅やカフェなどの情報をファインダー内に映し出す「周辺ファインダー」などの機能を追加することができる。再生環境が少し限定的だが、4K2Kの動画撮影にも対応しており、動画撮影も一段とクオリティが向上している。
また、カメラ以外のエンターテインメントとしては、テレビがフルセグ/ワンセグ両対応で、電波状態によって、自動的に視聴が切り替わる。フルセグについては、データ放送にも対応しているため、スポーツイベントのテレビ中継などでは先発メンバーを確認したり、追加データを確認できるなど、家庭用テレビと変わらない楽しみ方ができる。ちなみに、SHL25は本体左上の角にはフルセグ/ワンセグ用のアンテナも内蔵されており、外付けアダプタを持ち歩く必要はない。もちろん、録画にも対応している。
5.2インチの大画面で高画質なフルセグ放送を楽しめる
スマートフォンの新しい時代を最大限に楽しめる
「AQUOS SERIE SHL25」は買い!
スマートフォンが欠かせないアイテムとなった今日、スマートフォンに何を求めるかは人によってさまざまだ。しかし、スマートフォンがケータイと同じように、携帯電話ネットワークに接続するものである以上、最新のネットワークサービスに対応していることは、ユーザーにとってもっとも重要なポイントだ。そして、その最新のネットワークサービスで提供される多彩なコンテンツを最大限に楽しむには、やはり優れた性能を持つスマートフォンが必要であり、なかでもディスプレイの性能はスマートフォンの快適性を大きく左右することになる。
今回発売されたSHL25は、三辺狭額縁のEDGESTデザインを採用し、約5.2インチという大画面を幅約71mmというスリムなボディに凝縮しており、auが提供する最強のネットワークとコンテンツサービスを最大限に活用できる環境を実現している。機能的にも多彩なカメラ機能をはじめ、グリップマジックによる新しいユーザビリティなどを実現し、新しいスマートフォンの利用スタイルを訴求している。そして、SHL25に搭載された数々の機能をユーザーがいち早く知ることができるように、「体験しよう!」というオリジナルアプリが搭載されており、はじめてのユーザーにも慣れたユーザーにも使いやすい環境を整えている。スマートフォンの新しい時代を最大限に楽しめる一台として、幅広いユーザーにおすすめできるモデルだ。
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執筆: 法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話やスマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。主な著書は「できるWindows 8.1」をはじめ、「できるポケット docomo AQUOS PHONE ZETA SH-01F 基本&活用ワザ 完全ガイド」、「できるゼロからはじめるタブレット超入門 Android 4対応」など、数多く執筆。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。ホームページはこちら。