~法林岳之が迫る~ スマートフォンの可能性を最大限に引き出す IGZO搭載ディスプレイ
~法林岳之が迫る~ スマートフォンの可能性を最大限に引き出す IGZO搭載ディスプレイ ~法林岳之が迫る~ スマートフォンの可能性を最大限に引き出す IGZO搭載ディスプレイ

スマートフォンの魅力を左右するディスプレイ

わずか2年ほどの間で、国内市場に一気に普及が進んだスマートフォン。市場への普及のスピードも早かったが、その一方でスマートフォンを支えるさまざまな技術も大きく進化を遂げた。スマートフォンが動作する土台となるプラットフォームは毎年のように新しくなり、CPUもシングルコアからデュアルコアと進化を遂げ、昨年末からはクアッドコアを搭載したモデルがラインアップの中核に据えられている。

そして、もうひとつ忘れてはならないのがディスプレイだ。これまでのケータイの時代でもディスプレイは、重要なデバイスのひとつとされてきた。iモードをはじめとしたモバイルインターネットが始まった頃は、メールやコンテンツの多行表示のニーズが高くなり、少しずつ高解像度化が進み、待受画面などのカラー対応コンテンツに合わせ、カラー液晶ディスプレイが搭載された。カメラの高画素化に合わせ、さらにディスプレイの高解像度化が進み、ワンセグなどのエンターテインメントコンテンツの登場により、ワイドディスプレイが主流になった。スマートフォン時代に入ると、ケータイ時代の3インチ台だったディスプレイサイズは、4インチクラスが採用されるようになり、昨年の後半からはボディの持ちやすさとのバランスを考慮し、4.5~5インチが主流になりつつある。

しかし、ケータイ時代と比べ、スマートフォンではディスプレイの重要性が格段に高くなっており、スマートフォンのポテンシャルを大きく左右する要因となっている。極端なことを言ってしまえば、スマートフォンに採用されるディスプレイによって、そのスマートフォンでできること、楽しめること、活用できることに、格段の差がついてしまうかもしれないくらい重要だ。

たとえば、改めて説明するまでもないが、スマートフォンは基本的にディスプレイにタッチしながら操作をするため、ディスプレイのサイズはユーザーが見るサイズ、操作できるエリアということになる。つまり、ディスプレイサイズが小さければ、十分な視認性が確保できず、操作できるエリアも狭くなり、快適な操作感が得られなくなってしまう。

しかし、ディスプレイのサイズが大きくなるということは、それに比例して、ボディサイズも大きくなり、ポータビリティに大きく影響を与えることになる。スマートフォンはケータイ時代からの流れもあり、一般的に片手で操作することが多いが、ディスプレイサイズが大きくなるあまり、ボディサイズも大きくなり、片手では持てなくなったり、片手で持てても安定感がなくなってしまうケースも考えられる。つまり、ディスプレイのサイズはボディサイズとのバランスが重要になるわけだ。

また、スマートフォンはディスプレイにタッチしながら操作するため、タッチパネルの性能も重要になってくる。画面サイズは十分でもタッチパネルの反応が悪かったり、画面が見えにくいようであれば、スマートフォンの可能性を大きくスポイルしてしまう。

そして、忘れてはならないのが消費電力への影響だ。スマートフォンはさまざまな部品で構成されており、動作中はそれぞれの部品が電力を消費するが、ディスプレイは数々の部品の中でももっとも多く電力を消費するデバイスのひとつであり、ユーザーが利用する時間に応じて、CPUなどと共にバッテリーを消費することになる。

シャープは自らのお家芸である「液晶パネル」をそれぞれの時代に合わせ、ケータイやスマートフォンに搭載することで、市場をリードしてきたが、昨年、スマートフォン向けに搭載し、各方面で高い評価を得ているのが「IGZO搭載ディスプレイ」だ。

スマートフォンを変えるIGZO搭載ディスプレイ

国内外の市場において、シャープの液晶パネルが広く利用されていることは、我々ユーザーもよく知っている。ケータイやスマートフォン、液晶テレビはもちろん、最近ではデジタルサイネージなどにも多く採用されている。こうした個人や企業が使う製品化されたものだけでなく、液晶技術の分野で世界トップクラスの技術を持っており、その最先端の技術を活かした液晶パネルを数多く世に送り出している。

今回、スマートフォンやタブレットに搭載されたことで、各方面から注目を集めている「IGZO搭載ディスプレイ」だが、実は液晶パネルそのものの技術というより、半導体デバイスの技術であり、それを液晶パネルに搭載したものを「IGZO搭載ディスプレイ」と呼ぶ。IGZOとは「インジウム(In)」「ガリウム(Ga)」「亜鉛(Zn)」「酸素(0)」で構成される酸化物半導体であり、これらの頭文字を取って、「IGZO(イグゾー)」と呼んでいる。このIGZOという酸化物半導体にはいくつかの特徴があり、それを液晶パネルに活かすことで、IGZO搭載ディスプレイの大きなメリットを生み出している。

まず、IGZOはアモルファスシリコンに比べ、電子移動度が20~50倍と高いという特徴を持つ。一般的にTFT液晶にはそれぞれの素子に薄膜トランジスタが付けられており、この薄膜トランジスタに電気を通し、素子内の液晶を変化させることで、バックライトからの光を通したり、遮ったりして、画面のグラフィックや文字を表示する。しかし、この素子内に付けられた薄膜トランジスタは、バックライトからの光を部分的に遮ってしまっている。ところが、IGZOによる半導体はアモルファスシリコンに比べ、電子移動度が高いため、素子に付けるトランジスタが小さくできるうえ、それぞれの素子の枠を細線化できるため、画素開口率が高くなり、バックライトを遮るものを大幅に少なくすることができる。その結果、液晶パネルそのものの高精細化を実現しやすく、バックライトの光量を適切な明るさに抑えることができ、スマートフォンそのものの消費電力をグッと抑えることができる。

IGZOはトランジスタを小さくでき、素子の枠の細線化ができるため、バックライトを遮るものが大幅に少なくすることができる

2つめの特徴は半導体としてのOFF特性が高いことが挙げられる。液晶パネルは前述のように、それぞれの素子に付けられた薄膜トランジスタに電圧を掛けることで、液晶分子を変化させ、文字やグラフィックを表示している。しかし、アモルファスシリコンや低温ポリシリコンはリーク電流が大きく、半導体としてのOFF特性が低いため、液晶表示を維持するためには一定の駆動電圧を掛け続ける必要がある。これに対し、IGZOはOFF抵抗が低く、リーク電流も小さいため、電位が保持されている間は駆動電圧をOFFにしても表示は影響を受けない。もう少し具体的に表わすと、一般的なアモルファスシリコン液晶は、毎秒60回も駆動することで、表示を維持しているのに対し、IGZO搭載ディスプレイでは毎秒1回の駆動で表示を維持できるため、結果的に消費電力を抑えることができる。この新しい液晶の駆動方式をシャープでは「休止駆動」と呼んでいる。

一般的なアモルファスシリコン液晶は、毎秒60回も駆動することで、表示を維持しているのに対し、IGZO搭載ディスプレイでは毎秒1回の駆動で表示を維持できる

3つめの特徴としては、スマートフォンの快適性を大きく左右することになるタッチパネルの高性能化が挙げられる。これは前述のOFF特性が高いことに関わるが、スマートフォンのディスプレイには液晶パネルとタッチセンサーを組み合わせたものが搭載されている。しかし、これまでの液晶パネルは前述のように、表示を維持するために毎秒60回も駆動しなければならないため、断続的にノイズを発生させてしまう。このノイズを避けながら、タッチセンサーに触れた信号を検知し、それを画面操作などに反映しているわけだが、IGZO搭載ディスプレイは毎秒1回の休止駆動を採用しているため、ノイズ発生時間が短く、タッチしたときの微細な信号を検出できるタッチパネルに仕上げることができる。シャープのタッチパネルのSN比が従来に比べ、約5倍も優れていると謳っているのは、こうしたIGZO搭載ディスプレイの特性に起因するわけだ。

IGZO搭載ディスプレイは、微細な信号を検出できるタッチパネルに仕上げることができる

また、スマートフォンやタブレットのユーザーには直接、関係のないことになってしまうが、IGZO搭載ディスプレイは生産性が高いという特徴もある。現在、シャープが高品質な中小型液晶として、広く採用している液晶パネルに、低温ポリシリコン液晶があるが、高品質である半面、アモルファスシリコンによる液晶パネルに比べ、生産工程が複雑になっている。これに対し、IGZO搭載ディスプレイはアモルファスシリコンと同等の生産性を実現できている。今後、シャープがどのように液晶パネルをすみ分けていくのかはまだわからないが、ここまで解説したような省電力特性やタッチパネルの性能を考慮すると、スマートフォンやタブレットの主力モデルにはIGZO搭載ディスプレイが採用されることになりそうだ。

スマートフォンやタブレットにおけるIGZO搭載ディスプレイの難しさ

2011年冬モデルから搭載されている「エコ技」機能

シャープはこれまでもスマートフォンを利用するユーザーが持つ不満点として、もっとも多く挙げられる電池の持ちに対し、積極的に取り組んできた。たとえば、Androidプラットフォームを効率良く制御することで、アプリのムダな動作をコントロールしたり、液晶パネルのバックライトをコントロールできる「エコ技」機能を搭載することで、標準モードで動作させたときよりも数十%以上、ロングライフを実現してきた。

液晶パネルについてもCG Silicon液晶パネルをベースに、液晶デバイス内にメモリーを搭載することで、静止画表示時にCPUの駆動を止め、省電力を実現できるS-CG Silicon液晶を搭載し、他機種よりも優れた省電力動作を可能にしてきた。国内外でスマートフォンを販売するメーカーは数多くあるが、おそらくスマートフォンやタブレットの省電力については、もっとも積極的に取り組んできた1社と言えるだろう。

こうした状況において、高精細な表示をはじめ、優れた省電力性能や高性能のタッチパネルなど、スマートフォンやタブレットにとって、非常に魅力的なアドバンテージを持つIGZO搭載ディスプレイを得たのであれば、ユーザーの期待は高まるところだが、液晶パネルが生産できるからと言って、それがすぐにスマートフォンやタブレットに搭載でき、簡単に製品化できるというわけでもない。実は、IGZO搭載ディスプレイをスマートフォンやタブレットに搭載し、製品として仕上げていくには、いくつもの試行錯誤によって、実現できているという。

たとえば、IGZO搭載ディスプレイは前述のように、休止駆動と呼ばれる動作が可能だ。液晶パネルが情報を表示するだけのものであれば、そのメリットを最大限に活かせるかもしれないが、ユーザーがタッチして操作するスマートフォンやタブレットに搭載するとなると、低消費電力化を実現しつつ、ユーザーがタッチパネルを操作したときにすぐに起動し、タッチ操作が終われば、すぐに停止するといった制御をしなければならない。この部分はスマートフォンやタブレットを開発する通信システム事業本部とIGZO搭載ディスプレイを開発する液晶デバイス部門が話し合いながら、どちらが制御するのかを決めながら、作り込んでいったという。

IGZO、S-CG Silicon、CG Siliconの消費電力比較。IGZOは、S-CG Siliconより大幅に液晶消費電力が下がっている

また、IGZO搭載ディスプレイは画面を更新していないとき、プラットフォーム側の動作を制御して、消費電力を下げることができるが、何をどのように制御して、省電力化していくかは、ユーザーが実際に利用するスタイルを分析しながら、内容を決めているという。ここはケータイやスマートフォンを数多く開発してきたシャープならではのノウハウということであり、仮に他のメーカーが同じ液晶パネルを入手できたとしても同じような省電力性能は実現できないくらいの差があるという。

少し変わった比喩になるが、IGZO搭載ディスプレイの駆動と停止、制御のノウハウは、エコカーの世界にも似ているという。たとえば、今回のIGZO搭載ディスプレイを搭載したAQUOS PHONEやAQUOS PADでは「液晶アイドリングストップ」という言葉が使われているが、クルマのアイドリングストップもしくみとしては、渋滞時にドライバーがキーを回して、エンジンを切り、動き出しそうになったら、再びキーを回してエンジンを掛けることで、似たような動きができる。しかし、実際のアイドリングストップのクルマに乗ってみると、アイドリングの停止と再開は非常にスムーズに動作し、ドライバーは意識することなく、運転することができる。同じ省エネのハイブリッドカーもメーターパネルを見ていると、エンジンとモーターの切り替えがとてもスムーズだが、エンジンとモーターをいつ動かし、いつ止め、いつ切り替えるのかといった制御には、メーカーごとに培ってきた細かいノウハウがあり、それがクルマに活かされているわけだが、シャープの技術陣によれば、スマートフォンやタブレットに搭載されたIGZO搭載ディスプレイもまさにこれと同じように、同社の技術陣がこれまでのケータイやスマートフォンで培ってきたノウハウによって、実現されている。

IGZO搭載モデル第1弾、NTTドコモの「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」

IGZO搭載モデル第2弾、auのタブレット端末「AQUOS PAD SHT21」

また、制御以外の部分では筐体への実装についてもIGZO搭載ディスプレイならではのアドバンテージが活かされているという。前述のように、IGZOは電子移動度が高い半導体であるため、液晶パネルに組み込まれる電気回路もアモルファスシリコンなどに比べ、小さくできる。冒頭でも説明したように、スマートフォンやタブレットに大画面ディスプレイを搭載するとなると、当然のことながら、ボディサイズに大きな影響を与えるが、電子回路が小さくできるIGZO搭載ディスプレイは狭額縁を実現することができ、ボディ幅も抑えることができる。たとえば、NTTドコモのAQUOS PHONE ZETA SH-02Eは約4.9インチのIGZO搭載ディスプレイを採用しているが、ボディ幅は約68mmで、約4.7インチや約4.8インチのディスプレイを搭載した他モデルと同等以下に抑えられている。au向けのAQUOS PAD SHT21も約7インチクラスのディスプレイを搭載した他のタブレットよりも幅が狭い約110mmに抑えられ、ポータビリティに優れた環境を実現している。

(左)AQUOS PHONE ZETA SH-02E、(右)AQUOS PAD SHT21。IGZO搭載ディスプレイは狭額縁を実現することができ、ボディ幅も抑えることができる

そして、いよいよ3月にソフトバンクから発売される予定の「AQUOS PHONE Xx SoftBank 203SH」が、IGZO搭載ディスプレイを採用した3機種目になるわけだが、これもAQUOS PHONE ZETA SH-02Eと同じ約4.9インチのIGZO搭載ディスプレイを採用し、狭額縁により、ボディ幅は約69mmに抑えられている。大画面でもスリムなボディで、ユーザビリティを向上させているわけだ。

AQUOS PHONE Xx SoftBank 203SH

スマートフォン&タブレットを加速させるIGZO搭載ディスプレイモデルは買い!

スマートフォンやタブレットの普及は進んでいるが、プラットフォームの進化と共に、連携するインターネットのサービス、ユーザーが求めるものも拡大し、一段とスマートフォン&タブレットに求められる要素も拡がってきている。しかし、その根幹にあるのは、ユーザーがいかに快適に使えるかであり、ディスプレイはその快適性を大きく左右するデバイスということになる。高精細な大画面、優れた視認性、安心して使える省電力性能、快適な操作レスポンスなど、さまざまな要素がディスプレイに求められるが、シャープのIGZO搭載ディスプレイはそのニーズにしっかりと応えてくれるデバイスであり、AQUOS PHONEとAQUOS PADはスマートフォンやタブレットの可能性を最大限に引き出せるように仕上げられている。もっと快適に、もっと楽しく、もっと便利にスマートフォンとタブレットを使いこなしたいユーザーにこそ、ぜひIGZO搭載ディスプレイモデルをおすすめしたい。

法林岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。主な著書は「できるWindows 8」をはじめ、「できるポケット docomo AQUOS PHONE sv SH-10D スマートに使いこなす基本&活用ワザ 150」(2012年8月31日発売)、「できるポケット SoftBank AQUOS PHONE 006SH スマートに使いこなす基本&活用ワザ 150」(2011年6月30日発売)などのスマートフォン関連も数多く執筆。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。

関連情報

■ AQUOS PHONE XX SoftBank 203SH 製品情報
http://www.sharp.co.jp/products/sb203sh/

■ シャープ IGZOテクノロジーのご紹介
http://www.sharp.co.jp/igzo/

■ SH DASH
http://www.sharp.co.jp/k-tai/

関連記事

■ シャープ、IGZOの技術を解説
http://k-tai.impress.co.jp/docs/news/20121221_579842.html

■ 「AQUOS PHONE Xx」が仕様変更、ディスプレイが「IGZO」に
http://k-tai.impress.co.jp/docs/news/20121211_578164.html

■ 4.9インチ液晶のAndroid 4.1スマホ「AQUOS PHONE Xx 203SH」
http://k-tai.impress.co.jp/docs/news/20121009_564493.html

 
 

[PR]企画・製作 株式会社インプレス 営業統括部
問い合わせ先:watch-adtieup-aquosphone@ad.impress.co.jp
Copyright (c) 2013 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.