まず最初に謝っておこう。ごめん、ウチは10年経ってないや。
「ケータイ Watch」の創刊が2000年4月で、その前身となる「Mobile Central」が創刊されたのが1999年10月のこと。どう計算しても10年には届かないわけだ。
とはいえ、筆者自身は、Watchシリーズの中でも老舗中の老舗となる「INTERNET Watch」の創刊を準備していた頃、学生バイトとして雇われ、現在に至っている。あれから10年経ったのか……。
そんなわけで、個人的には「INTERNET Watch」にもそれなりに思い入れがあるのだが、今回はあくまでも「ケータイ Watch」が主題ということなので、そちらに話を戻そう。
● 「ケイタイ」じゃなくて「ケータイ」の理由
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「Mobile
Central」最終更新の時の画面レイアウト(バナー広告など、一部欠落あり) |
まずは、なぜ「Mobile Central」というサイトを立ち上げたのかという話をしておこう。Watchには「INTERNET
Watch」と「PC Watch」という2つのサイトがあったわけだが、PDAや携帯電話のようなデバイスが結構注目されているものの、内容的にはどちらのサイトでもなかなか扱いにくいような状況になっていた。そこで、それらをきっちりカバーできるようなサイトを作れないか、ということで始まったのが「Mobile
Central」なのである。
お気付きの方も多いと思うが、1999年というと、NTTドコモが「iモード」がスタートした年だ。その年の10月に「Mobile
Central」という名前でサイトを立ち上げたものの、当初想定していたPDAだとか、ノートPCだとか、その手のネタが少ないのに対し、携帯電話のネタは盛りだくさん。だったら、いっそのこと携帯電話中心で行っちゃっていいんじゃないの? ということで、半年後の2000年4月に「ケータイ
Watch」の誕生となったのである。
せっかくなので、ここで裏話を一つ。なぜ「ケイタイ Watch」でなく、「ケータイ Watch」になったのかという話だ。正直に白状すると、これ、検索エンジンのヒット数で決めたのだ。当時はGoogleではなく、gooの全盛期。gooで「ケイタイ」と「ケータイ」を検索して、多かったのが「ケータイ」。そんな感じである。
ちなみに、「k-tai.impress.co.jp」というドメイン表記についても、密かにこだわりがあったりする。「k-tai」の部分については、サイト名が「ケータイ」なんだから、「keitai」よりは「k-tai」のほうが目新しさがあって格好良いよね、とかそんな理由で決まったような気がする。問題はそれ以外の部分である。
実は、「窓の杜」を除けば、基本的にWatchシリーズのサイトのドメイン名には「watch」が入っているのだが、「ケータイ Watch」だけはこれが入っていない。何を隠そう、この部分は「将来、携帯からアクセスするようになるだろうから、URLはなるべく短いほうがいいでしょ」という配慮である。
まあ、携帯電話の場合も検索エンジンがそれなりに進化して、公式メニュー内に検索窓が付いちゃったりした関係で、現実的にはそこに「ケータイ」と入力して検索するのが、最も手っ取り早く「ケータイ
Watch」にアクセスする方法だったりするのは予想外の展開だ。
● 創刊当時を振り返る
さて、ここで「Mobile Central」の創刊当時、今から7年前をニュースで振り返ってみることにしよう。
軽く通信事業者の名前を挙げてみるだけでも、あの頃、ソフトバンクモバイルはJ-フォンで、ウィルコムはDDIポケットだった。auはIDOとDDI-セルラーで、アステルもツーカーもバリバリだった。なんだか松鶴家千とせ師匠のようになってしまったが、実際、そうだったのだ。わかるかなぁ……。
携帯電話の形状もストレート型中心から折りたたみ型中心へと移り変わってきた。ちなみに、「Mobile Central」で最初にニュースとして扱った機種はDDIポケット(現ウィルコム)の「DL-S200」。40×18×122mm、72gのストレート型端末で、PメールDXや64kbpsでのデータ通信に対応するモデルだ。
携帯電話として最初に登場したのはDDI-セルラー(現au)の「D301SA」で、こちらも39×127×18mm、78gのストレート型端末だ。当然、ディスプレイはモノクロで、カメラなどは搭載されていない。着うた? おサイフ? ワンセグ? 何それ? という感じだ。
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DL-S200 |
D301SA |
ところが、当時の記事を眺めていると、J-フォン(現ソフトバンクモバイル)の全面液晶端末「J-PE02」のように、今で言う「スマートフォン」みたいな端末もあったりする。松下の「POCKET・E」(DDIポケット向け)やツーカーの「Cara」といった、いわゆる「メール端末」の記事もあったりして、最近話題の「BlackBerry」なんかも、発想としてはそんなに新しくないように思えてしまうのが不思議だ。
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J-PE02 |
POCKET・E |
一人の編集者として当時の記事を読み返していて気付くのは、新端末の話をしているにも関わらず、製品写真が掲載されていないケースがあるということだ。その理由は案外単純なもので、当時、製品写真は紙焼きで貰っていたのだ。ニュースリリースの類も当時はFAXで貰うことが多く、その都度、製品写真はバイク便を飛ばして紙焼きを貰っていた。なので、間に合わない場合は、記事中に写真はなし。今でこそITの最先端を行っているように思える携帯電話業界だが、当時はそんなもんだったのだ。
その半年後となる2000年4月には「ケータイ Watch」創刊ということになるのだが、いきなりビッグなニュースで始まっている。「携帯・PHS加入者数、約5685万人に。固定電話を抜く」という見出しの記事だ。この日にこんなニュースが出たのは全くの偶然なのだが、今にして思えば本当に絶妙なタイミングで、どこか運命的なものを感じてしまう。後戻りできなくなってしまった瞬間でもある。
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「ケータイ
Watch」創刊当日のニュース |
● 次の主役は誰?
あれから6年半、その間に携帯電話は驚くほど進化を遂げた。「iモード」で“携帯電話”を“ケータイ”という道具に変えたドコモ、「写メール」で大きくシェアを伸ばしたJ-フォン(現ソフトバンクモバイル)、「FMケータイ」や「着うた」でケータイと音楽を結びつけたau、定額サービスでPHSを復活させたウィルコム――と、創刊からこれまでを振り返っただけでも、「ケータイ劇場」の主役はコロコロ変わっている。
それだけ競争が激しい業界と言えるが、今年から来年にかけて、MNP(番号ポータビリティ)制度の導入や新規参入という要素が追加され、主役争いはますます熾烈なものになりそう。その争いが熾烈になればなるほど、面白い製品や面白いサービスが登場してくるはずで、そうなってくれたら、劇場の観客としては嬉しい限りだ(役者の皆さんは辛いかもしれないけど)。
はたして、この劇場の幕が下りることはあるんだろうか?
(ケータイ Watch チーフ 湯野康隆) |